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支払期日を過ぎても報酬が入らないとき、催促のメールに何を書けるのかを調べたことがあります。「遅れた分の利息も請求できるらしい」という話は聞いていたので、その根拠になる条文を探しました。
そこで最初に引っかかったのが、法律の名前でした。フリーランスの取引で必ず名前が挙がる「下請法」を e-Gov で開いたところ、表示された題名が違っていたのです。
調べていくと、名前だけの話ではありませんでした。未払いのときに上乗せできる利息は、どの法律が使えるかで年14.6%と年3%に分かれます。報酬50万円が90日遅れた場合で、18,000円と3,699円の差です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の契約や取引の判断は弁護士等の専門家にご確認ください。
先に結論
- 「下請代金支払遅延等防止法」という題名の法律は、2026年1月1日から存在しません。題名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わり、「下請事業者」「親事業者」「下請代金」という用語も条文から消えました
- この法律が使える取引なら、遅延利息は年14.6%です(同法第6条、率は公正取引委員会規則)。使えない取引ではフリーランス法に遅延利息の条文がないため、民法の法定利率年3%になります
- どちらになるかは発注元の規模で決まります。資本金だけでなく、2026年から従業員数の基準も加わりました
「下請法」という題名の法律は、もうない
e-Gov 法令検索で昭和三十一年法律第百二十号を開くと、題名はこう表示されます。
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
法律番号は昭和31年法律第120号のままです。新しい法律ができたのではなく、既存の法律の題名が変わりました。施行日は附則に書かれています。
この法律は、令和八年一月一日から施行する。ただし、附則第五条の規定は、公布の日から施行する。
出典:同法 附則第1条
用語も置き換わりました。条文を読むときは、この対応で読むことになります。
| 2025年まで | 2026年1月1日から |
|---|---|
| 下請代金支払遅延等防止法(下請法) | 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 |
| 親事業者 | 委託事業者 |
| 下請事業者 | 中小受託事業者 |
| 下請代金 | 製造委託等代金 |
検索して出てくる解説記事の多くは、まだ旧称と旧用語で書かれています。内容が間違っているとは限りませんが、条文を自分で確認しようとしたときに、その名前では現行法にたどり着けません。
題名は「製造委託等」だが、ソフトウェア開発も対象
題名に「製造委託等」とあるため、物を作る仕事の話に見えます。ところが定義を読むと、そうではありませんでした。
この法律で「製造委託等」とは、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託及び特定運送委託をいう。
出典:同法 第2条第6項
そして「情報成果物」の第一号が、そのままプログラムです。
この法律で「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。
一 プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)出典:同法 第2条第7項第1号
受託開発は「情報成果物作成委託」に当たります。常駐やSESのように役務の提供が中心の契約であれば「役務提供委託」です。いずれも製造委託等に含まれます。ただし定義には条件があり、情報成果物作成委託は「事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物」の作成を委託する場合など、役務提供委託は「事業者が業として行う提供の目的たる役務」の提供を委託する場合です(第2条第3項・第4項)。発注元が顧客に納める・提供する仕事の一部を受ける形なら当てはまりますが、発注元が自社で使うシステムを、システム開発を業としていない会社から直接受ける場合は当てはまりません。
未払いのとき、上乗せできる利息は年14.6%
この法律が使える取引では、遅延利息の条文があります。
委託事業者は、製造委託等代金の支払期日までに製造委託等代金を支払わなかつたときは、中小受託事業者に対し、中小受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
出典:同法 第6条第1項
率は条文になく、規則に委ねられています。その規則が令和7年公正取引委員会規則第9号です。
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第六条第一項及び第二項の公正取引委員会規則で定める率は、年十四・六パーセントとする。
この規則は昭和37年公正取引委員会規則第1号を全部改正したもので、施行日は同じく令和8年1月1日です。率そのものは14.6%のまま変わっていません。
起算点に注意が要ります。条文の起算点は「支払期日」ではなく、「給付を受領した日」です。遅延利息が付き始めるのは、受領日から起算して60日を経過した日からです。
ここでの「受領した日」とは、発注者が成果物を受け取った日のことです。ソフトウェア開発なら、プログラムを納品した日がこれに当たります。
具体例で見てみます。契約で「支払期日は納品から30日後」と決めていたケースです。
- 4月1日:納品(発注者が給付を受領)
- 4月30日:支払期日(本来はここまでに支払われるはずだった)
- 5月1日〜5月30日:支払期日は過ぎているが、まだ遅延利息は発生しない期間
- 5月31日:受領日から60日を経過した日。この日から支払日まで、年14.6%の遅延利息が付く
つまり、「支払期日の翌日から利息が付く」わけではありません。支払期日を受領から30日後に前倒しで設定していても、遅延利息が付き始めるのは変わらず「受領日から60日を経過した日」からです。
年14.6%が使えるかは、発注元の規模で決まる
誰との取引でもこの法律が適用されるわけではありません。「委託事業者」に当たる相手からの発注に限られます。情報成果物作成委託と役務提供委託の区分は、対象が何かで2つに分かれています。プログラムの作成委託と、情報処理の役務提供委託は、政令により製造委託と同じ区分(第2条第8項第1号・第2号・第5号)に入ります。
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和三十一年法律第百二十号)第二条第八項第一号の政令で定める情報成果物はプログラムとし、同号の政令で定める役務は次に掲げるものとする。
一 運送
二 物品の倉庫における保管
三 情報処理
受託開発(プログラムの作成)と、情報処理を内容とする常駐・SESの場合、条文が定めている区分は次のとおりです。
| 発注元(委託事業者) | 受注側(中小受託事業者) | 根拠 |
|---|---|---|
| 資本金3億円超の法人 | 個人、または資本金3億円以下の法人 | 第2条第8項第1号 |
| 資本金1,000万円超3億円以下の法人 | 個人、または資本金1,000万円以下の法人 | 同項第2号 |
| 常時使用する従業員300人超の法人 | 従業員300人以下の個人・法人 | 同項第5号 |
3つ目が2026年からの追加分です。資本金1,000万円以下の会社でも、従業員が301人以上いれば委託事業者に当たります。「資本金が小さいから対象外」という説明は、この基準が加わったことで前提が変わりました。
なお、同項第3号・第4号・第6号(資本金5,000万円、従業員100人の区分)は、プログラム以外の情報成果物(映像やデザインなど)と、運送・保管・情報処理以外の役務に適用される区分です。受託開発やSESにはこちらは当てはまりません。
個人で受けている限り、受注側の要件は満たします。見るべきなのは発注元の資本金と従業員数です。どちらも登記情報や会社の採用ページで確認できる範囲の情報です。
フリーランス法には、遅延利息の条文がない
発注元が上の要件に当たらない場合はどうなるか。ここでフリーランス法が出てきます。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、こちらは発注元の資本金や従業員数による区分がありません。ただし、次に引用する支払期日の定めが適用されるのは「特定業務委託事業者」、つまり従業員を使用している個人か、二以上の役員がいるか従業員を使用している法人からの発注に限られます(第2条第6項)。従業員のいない個人からの発注には適用されません。
支払期日についての定めはあります。
報酬の支払期日は、(中略)特定受託事業者の給付を受領した日(中略)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
ただし、この法律の条文には「遅延利息」という語が一度も出てきません。全文を確認しましたが、支払期日を過ぎた場合に何パーセントを上乗せできるかを定めた規定は見当たりませんでした。違反に対しては公正取引委員会等による指導・助言(第22条)、勧告(第8条・第18条)、命令(第9条・第19条)があり、命令違反には50万円以下の罰金が定められています(第24条)。これは行政の側の措置であって、受注側が上乗せして請求できる利息とは別のものです。
では何もないのかというと、そうではありません。民法に金銭債務の特則があります。
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
出典:民法 第419条第1項
同条第2項には「債権者は、損害の証明をすることを要しない」と書かれています。遅れたことで具体的にいくら損したかを立証しなくても、法定利率分は請求できるという構造です。
その法定利率は今いくらか
民法第404条第2項は年3%と定めていますが、同条第3項で3年ごとに変動する仕組みになっています。条文を読むだけでは現在の率が分かりません。法務省が公表している告示で確認しました。
第3期(令和8年4月1日から令和11年3月31日まで)における基準割合が年0.4%と告示されました(民法第四百四条第五項の規定に基づき、令和八年四月一日から令和十一年三月三十一日までの期における基準割合を告示する件)。第1期の基準割合0.7%からの変動が1%未満ですので、第3期においては、法定利率は3%のまま変動しないこととなりました。
出典:法務省 令和8年4月1日以降の法定利率について(令和7年3月31日付)
同じページに各期の法定利率も並べて書かれています。令和2年3月31日までが年5%、令和2年4月1日から令和5年3月31日までが年3%、令和5年4月1日から令和8年3月31日までが年3%です。2026年9月現在は第3期にあたり、年3%です。次の見直しは令和11年4月になります。
金額にするとどれくらい差が出るか
年14.6%と年3%は、率としては約4.9倍の開きです。実際の報酬額で計算すると次のようになります。
| 報酬額 | 遅延日数 | 年14.6% | 年3% | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 30万円 | 30日 | 3,600円 | 740円 | 2,860円 |
| 50万円 | 30日 | 6,000円 | 1,233円 | 4,767円 |
| 50万円 | 90日 | 18,000円 | 3,699円 | 14,301円 |
| 80万円 | 90日 | 28,800円 | 5,918円 | 22,882円 |
1年365日で日割りした概算です。金額そのものは、正直なところ大きくありません。50万円が3か月遅れて18,000円です。手間と関係の悪化を考えると、これだけを目的に請求する話にはなりにくいと思います。
それでも条文を確認した意味はありました。催促のときに「支払期日から起算して」と書くか「受領日から60日を経過した日から」と書くかで、根拠を持っているかどうかが伝わります。金額よりも、そちらの効果のほうが大きいかもしれません。
未払いになる前の段階の話
ここまでは支払期日を過ぎた後の話です。ただ、実際に手元が苦しくなるのは未払いになる前の、入金を待っている期間のほうが多いと思います。
法律が認めている支払期日は受領日から60日以内です。つまり月末納品で翌々月末払いという条件は、それ自体は違法ではありません。再委託であることを明示された案件なら元委託支払期日から30日以内という別の定めがありますが、いずれにせよ2か月前後の間隔が制度上は許容されています。
この期間を自分の側で詰める方法として、請求書買取(ファクタリング)があります。支払期日前の請求書を買い取ってもらい、入金を待たずに現金化する仕組みです。借入ではないため信用情報を使わない審査になっているサービスが多く、ラボルはフリーランスと個人事業主に限定している点が特徴です。
ここは区別が必要です。請求書買取は、期日前の請求書を対象にした資金繰りの手段です。すでに期日を過ぎて支払われていない債権を取り立てるサービスではありません。未払いが起きてしまった後の手段としては使えません。
手数料は買取額の10%です。50万円の請求書なら5万円が引かれます。年利に直すと相当な水準になるため、常用するものではなく、入金までのつなぎとして使う前提の手段です。金額と期間を自分で計算してから判断することになります。
同じ請求書買取のサービスとしては、FREENANCE(フリーナンス)もあります。即日払いの手数料は請求書額面の3%〜10%で、口座開設は無料。口座を開設するだけで、仕事中の事故や納品物の欠陥を対象とする損害賠償保険「あんしん補償」が無料で付帯するのが特徴で、報酬の資金繰りと仕事上のトラブルへの備えを1つの口座でまかなえます。手数料率は利用状況で変わるため、どちらが安いかは自分の請求書の金額で見積もってから選ぶのが確実です。
同じ仕組みのサービスにはもう1つ、ペイトナーがあります。手数料は金額にかかわらず一律10%で、引かれる額を最初から計算できるのが、率が変動する仕組みとの違いです。申請は1万円から、上限は数十万円。営業時間内に審査が始まれば、審査から振込まで即日で完了します。少額の請求書を、手数料を読める形で早く現金化したいときに向いた設計です。
まとめ
- 「下請代金支払遅延等防止法」という題名の法律は2026年1月1日から存在しない。題名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わり、親事業者・下請事業者・下請代金という用語も置き換わった
- 題名は「製造委託等」だが、情報成果物にプログラムが明記されているため、受託開発も常駐も対象に入る(第2条第6項・第7項)
- この法律が使える取引なら、遅延利息は年14.6%(第6条、令和7年公正取引委員会規則第9号)。起算は支払期日ではなく受領日から60日を経過した日
- 適用されるかは発注元の規模で決まる。受託開発・SESは政令により製造委託と同じ区分(資本金3億円・1,000万円、従業員300人)。2026年から従業員数の基準(300人超)が加わったため、資本金が小さい会社でも対象になることがある
- フリーランス法には遅延利息の条文がない。この法律しか使えない場合は民法第419条により法定利率となり、2026年9月現在は年3%(第3期・令和8年4月1日〜、法務省告示)
- 金額の差は50万円が90日遅れて14,301円。大きな額ではないが、根拠を持って催促できるかどうかは変わる
あわせてどうぞ
支払期日そのもののルール(受領日から60日、再委託なら30日)と、報酬額の明示義務については単価相場とフリーランス法の記事にまとめています。案件が途切れた時期の備え方は生活防衛資金の記事に書きました。
この記事で参照した一次情報
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号)(題名、第2条第3項・第4項の定義、第2条第8項第1号・第2号・第5号の規模要件、第3条の支払期日、第6条の遅延利息、附則第1条の施行日を確認)
- 同法第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令(平成13年政令第5号)(政令で定める情報成果物がプログラム、役務が運送・物品の倉庫における保管・情報処理であることを確認)
- 同法第六条第一項及び第二項の率を定める規則(令和7年公正取引委員会規則第9号)(遅延利息の率が年14.6%であること、旧規則の全部改正であること、施行日を確認)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)(第2条第6項の特定業務委託事業者の定義、第4条の支払期日、条文に遅延利息の規定がないこと、第8条・第9条・第18条・第19条・第22条・第24条の措置と罰則を確認)
- 民法(明治29年法律第89号)(第404条の法定利率と変動制、第419条の金銭債務の特則を確認)
- 法務省 令和8年4月1日以降の法定利率について(第3期の基準割合0.4%、法定利率が年3%で据え置きであることを確認)
- FREENANCE公式サイト(口座開設が無料であること、損害賠償保険「フリーナンスあんしん補償」が無料で付帯すること、即日払いの手数料が請求書額面の3%〜10%であることを確認)
- ペイトナー公式サイト(手数料が一律10%であること、申請が1万円から・上限が数十万円であること、営業時間内に審査が開始された場合は即日で審査・振込が完了することを確認)
本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。遅延利息の金額は1年を365日として日割り計算した概算であり、実際の請求額は契約内容や起算日の取り方によって変わります。約定利率が法定利率を上回る契約では約定利率が優先されます(民法第419条第1項ただし書)。法令は改正されることがあるため、最新の情報および個別の判断は弁護士等の専門家にご確認ください。

