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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署・市区町村にご確認ください。
会社員として働きながら受託を1件だけ受けた、という状況で必ず出てくるのが「20万円以下なら申告しなくていい」という話です。実際にそのとおりの規定があります。
ただしそれは所得税の規定であって、住民税には同じ基準がありません。条文を並べると、なぜ「申告不要と聞いたのに市役所から連絡が来た」が起きるのかがはっきりします。
先に結論
- 20万円の基準は所得税法121条の「確定所得申告を要しない場合」です。給与が2,000万円以下で、1か所から受けた給与の全部が源泉徴収(または年末調整)の対象になっていて、給与・退職以外の所得が20万円以下、という条件が全部そろったときに使えます
- 住民税にこの規定はありません。地方税法317条の2は申告義務を定めていて、免除されるのは「給与所得以外の所得を有しなかった」人などに限られます。副業の所得があれば、金額にかかわらず当てはまりません
- 20万円は売上ではなく所得です。収入から必要経費を引いた後の金額で判定します
- 確定申告をすれば、住民税の申告書も提出したものとみなされます(地方税法317条の3)。二重に出す必要はありません
所得税の20万円は条文にある
まず、根拠がある話だという点を確認しておきます。
その年において給与所得を有する居住者で、その年中に支払を受けるべき(中略)給与等の金額が二千万円以下であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、(中略)その年分の課税総所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。(中略)
一 一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の(中略)事業所得の金額(中略)及び雑所得の金額の合計額(中略)が二十万円以下であるとき。
条文の見出しも「確定所得申告を要しない場合」です。納めなくてよいのではなく、申告書を出さなくてよい、という規定である点に注意が必要です。
条件は3つそろって初めて成立する
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 給与の額 | 年2,000万円以下 |
| 給与の受け方 | 1か所から受けていて、その全部が源泉徴収(183条)または年末調整(190条)の対象になっている |
| 他の所得 | 給与・退職以外の所得の合計が20万円以下 |
2か所以上から給与を受けている場合は第2号が適用され、従たる給与の額と他の所得を合計して20万円以下かで判定されます。副業先からも給与として支払われている場合は、この計算に副業の給与そのものが入ります。
住民税には同じ規定がない
住民税の申告義務は、次のように定められています。
(前略)三月十五日までに、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申告書を賦課期日現在における住所所在地の市町村長に提出しなければならない。ただし、(中略)給与支払報告書(中略)を提出する義務がある者から(中略)給与(中略)の支払を受けている者で前年中において給与所得以外の所得(中略)を有しなかつたもの(後略)については、この限りでない。
会社員が住民税の申告をしなくて済んでいるのは、このただし書きのおかげです。勤務先が給与支払報告書を市区町村に出しているので、給与以外の所得がない限り、本人が申告する必要はありません。
逆に言えば、副業の所得があった時点でこのただし書きから外れます。条文に金額の線が引かれていないので、10万円でも5万円でも同じです。
| 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|
| 20万円以下の申告不要 | ある(所得税法121条) | ない |
| 申告が不要になる条件 | 給与2,000万円以下・給与の全部が源泉徴収済み・他の所得20万円以下 | 給与以外の所得がないこと |
| 副業所得が10万円のとき | 申告不要 | 申告が必要 |
確定申告をすれば住民税の申告は不要
ではどちらも出すのかというと、そうではありません。
(前略)前年分の所得税につき(中略)確定申告書(中略)を提出した場合(中略)には、本節の規定の適用については、当該確定申告書が提出された日に前条第一項から第四項までの規定による申告書が提出されたものとみなす。
確定申告書を出せば、住民税の申告書も出したものとみなされます。実務上の選択肢は「確定申告をする」か「住民税の申告だけを市区町村にする」かの二択で、何もしないという選択肢はありません。
20万円は売上ではなく所得
もう1つ間違えやすいのが、判定に使う金額です。条文が並べているのは「事業所得の金額」「雑所得の金額」で、収入金額ではありません。
受託の報酬が25万円でも、そのために買った機材や外注費が7万円あれば所得は18万円です。この場合は20万円以下になります。逆に、経費をまったく計上していなければ売上がそのまま所得になるので、25万円は25万円のままです。
経費として何が入るかは経費にできるもののチェックリストに、率の目安がない理由は経費率の記事にまとめています。
事業所得か雑所得かで結論は変わらない
副業の所得を事業所得と雑所得のどちらで申告するかは論点になりますが、20万円の判定についてはどちらでも同じです。所得税法121条第1項第1号が「事業所得の金額(中略)及び雑所得の金額の合計額」と両方を並べて書いているためです。
区分そのものは、青色申告特別控除や損益通算の可否に効いてきます。判定基準は事業所得と雑所得を分けるのは帳簿という記事で扱っています。
実務としてどうするか
1. まず所得を出す
20万円を超えるかどうかは、収入と経費を並べないと分かりません。年末になって慌てて集計すると、領収書が残っていない支出は経費に入れられません。副業の入出金だけでも記録が残る形にしておくと、判定と申告の両方がそのまま進みます。
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2. 20万円以下でも住民税の手当てをする
選択肢は2つです。確定申告をしてしまえば住民税の申告も済みます。所得税の還付が見込めるなら、こちらのほうが得になることもあります。確定申告をしないなら、住民税の申告書を市区町村に出します。様式と提出先は市区町村ごとに違うので、住んでいる自治体のページを見ることになります。
3. 源泉徴収されていた分は確定申告でしか戻らない
副業の報酬から源泉徴収されている場合、申告しなければ引かれたままです。20万円以下で申告不要だからといって放置すると、納めすぎた所得税が返ってきません。源泉徴収の対象になる報酬かどうかは請求書と源泉徴収の記事にまとめています。
まとめ
- 20万円の基準は所得税法121条。給与2,000万円以下・1か所の給与の全部が源泉徴収(または年末調整)の対象・給与と退職以外の所得20万円以下、の3つがそろって初めて使える
- 住民税に20万円の基準はない(地方税法317条の2)。申告が免除されるのは「給与所得以外の所得を有しなかった」人など(同条1項ただし書)で、副業の所得があれば金額を問わず外れる
- 確定申告をすれば住民税の申告書も出したものとみなされる(同法317条の3)。出すのはどちらか一方でよい
- 20万円は収入から必要経費を引いた後の所得で判定する。事業所得でも雑所得でも合算して判定する点は同じ
- 源泉徴収された分は確定申告をしないと戻らない
この記事で参照した一次情報
- 所得税法(昭和40年法律第33号)(第121条第1項の確定所得申告を要しない場合、第1号の給与1か所・給与の全部が第183条の源泉徴収又は第190条の年末調整の対象・他の所得20万円以下、第2号の2か所以上から給与を受ける場合の判定を確認)
- 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人が確定申告を要することを確認)
- 地方税法(昭和25年法律第226号)(第317条の2第1項の申告義務と、ただし書きの免除の範囲(給与所得以外の所得を有しなかつたもの、および所得割の納税義務を負わないと認められる者のうち条例で定めるもの)、第317条の3第1項の確定申告書の提出をもって住民税の申告書が提出されたものとみなす規定を確認)
本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。住民税の申告の様式・提出先・期限の運用は市区町村によって異なります。勤務先の就業規則による副業の可否は税務とは別の問題です。法令は改正されることがあるため、最新の情報および個別の判断は税理士または所轄の税務署・市区町村の窓口にご確認ください。

