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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の都道府県税事務所にご確認ください。
8月ごろ、都道府県から「個人事業税」の納税通知書が届きます。ところがフリーランスエンジニアの間では、来た人と来ない人が分かれます。同じくらいの所得でも分かれるので、単なる所得の大小の話ではありません。
調べると理由がはっきりしました。個人事業税は、法律に列挙された業種にしかかかりません。そしてその列挙に「ソフトウェア業」「情報処理業」「システム開発業」は出てきません。
先に結論
- 個人事業税がかかるのは、地方税法72条の2が列挙する第1種・第2種・第3種事業だけです。法律と施行令を合わせて70業種で、条文に「ソフトウェア」「情報処理」「システム開発」という語は1つもありません
- 実務上の分かれ目は第1種事業の「請負業」に当たるかどうかです。受託して成果物を納める形は請負業と判断されやすく、税率は5%です
- 事業主控除が年290万円あります。所得がこれ以下なら、業種に当たっても税額は0円です
- ただし事業税の所得計算では青色申告特別控除を引けません。65万円を引いた後の所得で290万円を下回っていても、事業税では足し戻して判定されます
かかる事業は法律に列挙されている
個人事業税の対象は、次のように定められています。
個人の行う事業に対する事業税は、個人の行う第一種事業、第二種事業及び第三種事業に対し、所得を課税標準として事務所又は事業所所在の道府県において、その個人に課する。
そして第1種事業・第2種事業・第3種事業の中身は、同じ条文の第8項・第9項・第10項に品目で並べられています。条文に並ぶのは第1種31業種・第2種2業種・第3種24業種で、それぞれの末尾に政令に委ねる号(第8項31号・第9項3号・第10項21号)があります。その政令(地方税法施行令10条の7・12条・14条)で定める13業種を足すと、第1種が37業種、第2種が3業種、第3種が30業種で、合計70業種です。
ここが所得税との決定的な違いです。所得税は事業所得であれば業種を問いませんが、事業税は列挙に当たらなければそもそも課税されません。
列挙に「ソフトウェア業」は出てこない
第1種事業の列挙は、物品販売業から始まって次のように続きます。
第三項の「第一種事業」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品販売業(動植物その他通常物品といわないものの販売業を含む。)
一の二 保険業
二 金銭貸付業
(中略)
十三 駐車場業
十四 請負業
十五 印刷業
十六 出版業
十七 写真業
第3種事業のほうは、医業・弁護士業といった士業が中心です。エンジニアに近そうな業種としてコンサルタント業(第15号の3)とデザイン業(第16号の3)が入っています。
条文を通して確認しましたが、「ソフトウェア」「情報処理」「システム開発」という語は72条の2に1つも出てきません。プログラミングという語もありません。施行令で追加されている13業種にもありません。70業種の一覧は各都道府県が公表しており、東京都主税局の一覧でも同じです。
「ほとんどの事業が該当します」という但し書き
東京都主税局は法定業種について「現在、法定業種は70の業種があり、ほとんどの事業が該当します」と書いています。列挙にない=かからない、と単純には言えません。実際には次の「請負業」の解釈で拾われるためです。
分かれ目は「請負業」に当たるか
受託開発は、第1種事業の請負業に当たると判断されるのが一般的です。請負そのものは民法に定義があります。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
出典:民法 第632条
一方、エンジニアの契約でよく使われる準委任は、仕事の完成を約束しません。委任の規定が準用される形です。
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
出典:民法 第656条
成果物を納めて対価を受け取る形は請負業に近く、稼働時間に対して支払われる形は請負ではない、という整理になります。ただし契約書の表題が「準委任」なら自動的に対象外になる、という話ではありません。事業税の業種判定をするのは都道府県で、契約の名称ではなく実態で見られます。
判断に迷う場合は、都道府県税事務所に事業の内容を伝えて確認するのが確実です。納税通知書が届かないこと自体は、対象外だと確定した証拠にはなりません。
290万円の事業主控除がある
業種に当たる場合でも、所得から290万円が引かれます。
事業を行う個人については、当該個人の事業の所得の計算上二百九十万円を控除する。
年の途中で開業した場合は月割りになります。同条第2項に「二百九十万円に当該年において事業を行つた月数を乗じて得た額を十二で除して算定した金額」とあり、東京都主税局の表では1か月なら242,000円、6か月なら1,450,000円です。
税率は業種の区分ごとに決まっていて、第1種事業と第3種事業の多くが5%、第2種事業が4%です(地方税法72条の49の17)。第1種事業で所得400万円なら、次のようになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 事業の所得 | 4,000,000円 |
| 事業主控除 | −2,900,000円 |
| 課税標準 | 1,100,000円 |
| 税率5%を掛けた税額 | 55,000円 |
青色申告特別控除は引けない
ここが見落とされやすいところです。事業税の所得は、次のように計算すると定められています。
(前略)所得税の課税標準である所得につき適用される所得税法第二十六条及び第二十七条(中略)に規定する不動産所得及び事業所得の計算の例により算定する。
青色申告特別控除の根拠は所得税法ではなく租税特別措置法25条の2です。上の条文が例によるとしているのは所得税法26条・27条の計算なので、青色申告特別控除は事業税の所得計算に入りません。東京都主税局が示している算式にも、事業所得に「+ 青色申告特別控除額」を足し戻す形で明記されています。
影響は具体的です。確定申告書の所得金額が250万円でも、それが65万円を引いた後の数字なら、事業税では315万円で判定されます。290万円を下回っているつもりでも課税される、という食い違いはここから生まれます。
| 所得税 | 個人事業税 | |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除65万円 | 引ける | 引けない |
| 基礎控除 | 引ける | ない |
| 事業主控除290万円 | ない | 引ける |
控除の種類がそもそも違うので、所得税の課税所得をそのまま持ってきて判断できません。年間の所得を把握したうえで両方を分けて見る必要があるため、クラウド会計ソフトで青色申告特別控除の前後の金額をどちらも確認できる状態にしておくと確実です。
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申告は原則いらない
個人事業税には申告の規定がありますが(地方税法72条の55)、確定申告書を出していればその日に事業税の申告もしたものとみなされるので、別途出す必要はありません(同法72条の55の2)。東京都主税局は「所得税の確定申告や住民税の申告をした方は個人の事業税の申告をする必要はありません」としたうえで、確定申告書の「事業税に関する事項」欄に記入するよう案内しています。
納付は納税通知書が届いてからで、東京都の場合は8月と11月の2回です。所得税や住民税と違って、事業を始めた年には来ません。前年の所得に対してかかるためで、独立2年目に初めて届くことになります。予定納税や住民税と重なる時期でもあるので、資金繰りの見通しには入れておいたほうが安全です。
まとめ
- 個人事業税は地方税法72条の2と施行令が定める70業種にしかかからない。条文に「ソフトウェア」「情報処理」「システム開発」の語はない
- 実務上は第1種事業の「請負業」(第8項第14号)に当たるかで分かれる。判定するのは都道府県で、契約書の表題ではなく実態で見られる
- 事業主控除は年290万円(72条の49の14)。年の途中の開業は月割り。税率は第1種・第3種の多くが5%、第2種が4%
- 事業税の所得計算では青色申告特別控除を引けない(72条の49の12第1項)。所得税の課税所得をそのまま当てはめると判定を誤る
- 確定申告をしていれば事業税の申告は不要。納税通知書は前年の所得に対して届くため、独立2年目から始まる
あわせてどうぞ
2年目にまとめて来る税と保険料の全体像は収入変動への備え方に、青色申告特別控除65万円の要件はクラウド会計ソフト比較にまとめています。
この記事で参照した一次情報
- 地方税法(昭和25年法律第226号)(第72条の2第3項の課税対象、第8項の第1種事業31業種と第14号の請負業、第10項の第3種事業24業種、各項末尾の政令委任、第72条の49の12第1項の所得の算定方法、第72条の49の14の事業主控除290万円と月割り、第72条の49の17の標準税率、第72条の55の申告義務、第72条の55の2の確定申告書の提出をもって事業税の申告があったものとみなす規定を確認)
- 地方税法施行令(昭和25年政令第245号)(第10条の7の第1種事業6業種、第12条の第2種事業1業種、第14条の第3種事業6業種を確認。法律の列挙と合わせて70業種になること、施行令の13業種にも「ソフトウェア」「情報処理」「システム開発」の語がないことを確認)
- 民法(明治29年法律第89号)(第632条の請負の定義、第656条の準委任を確認)
- 東京都主税局 個人事業税(法定業種70業種の一覧と税率区分、事業主控除の月割額、青色申告特別控除を足し戻す税額の算出式、確定申告をした場合は事業税の申告が不要であることを確認)
本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。業種の判定は事業の実態にもとづいて都道府県が行うため、同じ職種でも結論が分かれることがあります。税率・納期・軽減制度は都道府県によって異なります。法令は改正されることがあるため、最新の情報および個別の判断は税理士または都道府県税事務所にご確認ください。

