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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
インボイスの登録をしたあと、請求書のテンプレートに登録番号を足せば終わり、と思っていました。実際に条文を読むと、それだけでは足りません。
適格請求書に書くべき事項は消費税法57条の4に6項目が列挙されていて、消費税額の計算方法まで政令で決まっています。明細行ごとに消費税を計算して合計する形は、この計算方法に当てはまりません。
先に結論
- 書くべき事項は消費税法57条の4第1項の6項目です。登録番号だけでなく、適用税率と消費税額等、そして交付を受ける相手の氏名・名称も含まれます
- 消費税額の端数処理は「1つの適格請求書につき、税率ごとに1回」です。明細行ごとに端数処理して足し上げる方式は認められていません(消費税法施行令70条の10)
- 交付の義務が発生するのは相手から求められたときです。条文は「交付を求められたときは(中略)交付しなければならない」と書いています
- 小売業などには記載事項が少ない適格簡易請求書がありますが、受託開発の請求書は原則こちらに当たりません
6項目は条文に列挙されている
適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等(中略)を行つた場合(中略)において、当該課税資産の譲渡等を受ける他の事業者(中略)から次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類(中略)の交付を求められたときは、当該課税資産の譲渡等に係る適格請求書を当該他の事業者に交付しなければならない。(中略)
一 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号(中略)
二 課税資産の譲渡等を行つた年月日(中略)
三 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(中略)
四 (中略)税抜価額(中略)又は税込価額(中略)を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率(中略)
五 消費税額等(中略)
六 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
エンジニアの請求書で抜けやすいのは第4号と第6号です。
| 号 | 記載事項 | 抜けやすい点 |
|---|---|---|
| 一 | 氏名または名称と登録番号 | 屋号だけ書いて登録番号を入れ忘れる |
| 二 | 取引年月日 | 請求書の発行日と取引日を取り違える |
| 三 | 資産または役務の内容 | 「開発費一式」で内容が特定できない |
| 四 | 税率ごとに区分した合計額と適用税率 | 「10%」という表記自体を書いていない |
| 五 | 消費税額等 | 端数処理の方法が条件に合っていない |
| 六 | 交付を受ける事業者の氏名または名称 | 宛名がない請求書 |
第4号は「合計した金額及び適用税率」と書かれています。税込金額を出しているだけでは足りず、10%という税率の表記そのものが必要です。
第6号があるため、宛名を空欄にした請求書は適格請求書になりません。テンプレートによっては宛名が任意項目になっていることがあります。
端数処理は請求書につき1回
第5号の消費税額等をどう計算するかは、政令に方法が定められています。
法第五十七条の四第一項第五号に規定する政令で定める方法は、次の各号に掲げる方法のいずれかとする。この場合において、当該各号に掲げる方法により算出した金額に一円未満の端数が生じたときは、当該端数を処理するものとする。
一 (中略)税抜価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額に百分の十(中略)を乗じて算出する方法
二 (中略)税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額に百十分の十(中略)を乗じて算出する方法
掛ける対象が「税率の異なるごとに区分して合計した金額」である点が要です。先に税率ごとに合計してから10%を掛けるので、端数処理は1つの請求書につき税率ごとに1回になります。
明細が3行ある請求書で比べると、差が出ます。
| 明細 | 税抜 | 行ごとに計算した消費税(切り捨て) |
|---|---|---|
| 設計 | 123,456円 | 12,345円 |
| 実装 | 234,567円 | 23,456円 |
| テスト | 145,678円 | 14,567円 |
| 合計 | 503,701円 | 50,368円 |
合計してから計算すると 503,701円 × 10% = 50,370.1円で、端数を切り捨てて50,370円です。行ごとに計算した50,368円とは2円ずれます。金額としては小さいものの、政令が認めている方法は後者ではありません。表計算ソフトのテンプレートを自作している場合、この形になっていないか確認しておく価値があります。
交付義務は「求められたとき」に生じる
条文をもう一度見ると、義務が発生する条件が書かれています。
「交付を求められたときは(中略)交付しなければならない」という形なので、相手が求めていないのに交付しなければならない、という規定ではありません。ただし取引先が仕入税額控除を受けるには適格請求書が必要なので、実務上はほぼ毎回求められます。
また、交付を求められる相手は「課税資産の譲渡等を受ける他の事業者」で、条文の括弧書きで免税事業者は除かれています。相手が免税事業者なら、そもそも交付義務の対象外です。
簡易な様式が使えるのは限られた業種
同条第2項には、記載事項が少ない適格簡易請求書の規定があります。適用されるのは「小売業その他の政令で定める事業」で、飲食店業やタクシー業などが該当します。簡易な様式では第6号の宛名が不要になりますが、受託開発の請求書は原則としてこちらに当たりません。
交付したら写しを7年保存する
交付して終わりではありません。発行した側にも保存義務があります。
適格請求書、適格簡易請求書若しくは適格返還請求書を交付し、又はこれらの書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を提供した適格請求書発行事業者は、政令で定めるところにより、これらの書類の写し又は当該電磁的記録を保存しなければならない。
期間は政令に定められています。
適格請求書等を交付した適格請求書発行事業者は、当該適格請求書等の写し(中略)を整理し、その交付した日(中略)の属する課税期間の末日の翌日から二月(中略)を経過した日から七年間、これを納税地又はその取引に係る事務所(中略)の所在地に保存しなければならない。
起算点が交付日ではなく「課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日」である点に注意が要ります。個人事業主の課税期間は暦年なので、2026年に交付した請求書なら2027年3月1日から7年間、つまり2034年2月末までです。
メール添付で送ったPDFをそのまま控えとする場合、送信済みメールに残っているだけでは整理された状態とは言いにくくなります。請求書を発行した時点で控えが1か所に貯まる形にしておくほうが、7年後に探す手間がありません。
登録していない場合の話は別
ここまでは適格請求書発行事業者として登録している場合の話です。登録していない場合は適格請求書を交付できず、取引先の仕入税額控除に経過措置が適用されます。その割合と時期についてはインボイス未登録と2026年10月の記事にまとめました。
実務としてどうするか
請求書のテンプレートを自作している場合、確認する箇所は次の3つです。
- 登録番号・適用税率(10%)・宛名の3つが入っているか
- 消費税額が合計してから掛ける形で計算されているか
- 取引年月日が役務を提供した日になっているか
会計ソフトの請求書機能を使えば、この3点は様式として満たされます。そのまま売上として計上されるので、請求書を作った時点で帳簿にも反映される点が手作業との差です。源泉徴収がある取引の消し込みまで含めて管理できます。
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まとめ
- 適格請求書の記載事項は消費税法57条の4第1項の6項目。登録番号だけでなく適用税率の表記と宛名も必要
- 消費税額は税率ごとに合計してから10%(または110分の10)を掛ける方法で計算する。端数処理は請求書につき税率ごとに1回(消費税法施行令70条の10)
- 明細行ごとに消費税を計算して足し上げる形は、政令が定める方法に当てはまらない
- 交付義務は相手から求められたときに生じる。相手が免税事業者なら対象外
- 記載事項が少ない適格簡易請求書は小売業などに限られるので、受託開発の請求書には使えない
- 交付した側にも写しの保存義務がある。期間は課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間(消費税法57条の4第6項・同施行令70条の13第1項)
あわせてどうぞ
請求書から引かれる源泉徴収の話は請求書と源泉徴収の記事に、報酬が支払われないときの話は未払い報酬と遅延利息の記事にまとめています。
この記事で参照した一次情報
- 消費税法(昭和63年法律第108号)(第57条の4第1項の適格請求書の記載事項6項目、交付義務が「交付を求められたとき」に生じること、相手方から免税事業者が除かれること、第2項の適格簡易請求書が小売業その他の政令で定める事業に限られること、第6項の交付した書類の写しの保存義務を確認)
- 消費税法施行令(昭和63年政令第360号)(第70条の10の消費税額等の計算方法が、税率の異なるごとに区分して合計した金額に税率を乗じる方法であること、端数処理がその算出後に行われること、第70条の13第1項の写しの保存期間と起算点を確認)
本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。記載した計算例は税率10%のみの取引を前提とした概算です。軽減税率の対象が混ざる場合は税率ごとに区分して計算します。法令は改正されることがあるため、最新の情報および個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
