エージェントのマージンはなぜ分からないのか|派遣にある開示義務が業務委託にはない

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の契約に関する判断は弁護士または所轄の窓口にご確認ください。

「エージェントのマージンは20〜30%」という説明をよく見かけます。ところが出どころが書かれていません。エージェント各社の公式サイトを見ても、手数料率を公表している会社はほとんどありません。

調べて分かったのは、単に各社が伏せているという話ではないということでした。派遣にはマージン率を公表する法律上の義務がありますが、フリーランスの業務委託にはその規定がありません。

先に結論

  • 労働者派遣にはマージン率の情報提供義務があります。計算式まで法律に書かれていて、派遣元は事業所ごとに公表しなければなりません(労働者派遣法23条5項)
  • 有料職業紹介の手数料は、法律で種類が限られています。厚生労働省令で定める手数料か、あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表に基づく手数料でなければ取れません(職業安定法32条の3第1項)
  • フリーランスの業務委託には、どちらの義務もありません。フリーランス法3条が明示を求める事項は施行規則に列挙されていますが、その中に仲介事業者の手数料率は入っていません
  • したがってまず確認すべきなのは、その契約が派遣なのか業務委託なのかです。派遣なら数字は公表されています

派遣にはマージン率の公表義務がある

労働者派遣法には、次の規定があります。

派遣元事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の数、労働者派遣の役務の提供を受けた者の数、労働者派遣に関する料金の額の平均額から派遣労働者の賃金の額の平均額を控除した額を当該労働者派遣に関する料金の額の平均額で除して得た割合として厚生労働省令で定めるところにより算定した割合、教育訓練に関する事項(中略)に関し情報の提供を行わなければならない。

出典:労働者派遣法 第23条第5項

読みにくい書き方ですが、やっていることは割り算です。

条文の表現 意味
労働者派遣に関する料金の額の平均額 派遣先が払う額(A)
派遣労働者の賃金の額の平均額 働く人が受け取る額(B)
(A−B)÷ A マージン率

この式が法律の条文に書かれているというのがポイントです。各社が独自に定義した数字ではなく、全社が同じ計算式で出した割合を、事業所ごとに公表しています。派遣で働くなら、その事業所の数字を見にいけます。

職業紹介の手数料は種類が限られている

転職エージェントのような有料職業紹介事業には、別の縛りがあります。

(前略)有料職業紹介事業者(中略)は、次に掲げる場合を除き、職業紹介に関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない。
一 職業紹介に通常必要となる経費等を勘案して厚生労働省令で定める種類及び額の手数料を徴収する場合
あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表(手数料の種類、額その他手数料に関する事項を定めた表をいう。)に基づき手数料を徴収する場合

出典:職業安定法 第32条の3第1項

認められているのは、第1号の厚生労働省令で定める種類と額の手数料か、第2号の届け出た手数料表に基づく手数料のどちらかです。それ以外の手数料は徴収できません。さらに同条第2項では、求職者から手数料を取ることが原則として禁じられています。

業務委託にはどちらの義務もない

フリーランスのエージェントの多くは、派遣でも職業紹介でもありません。エージェントが企業から仕事を受け、それをフリーランスへ業務委託する形です。この場合に適用されるのがフリーランス法です。

業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(中略)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第3条第1項

「その他の事項」の中身は、公正取引委員会規則に列挙されています。

業務委託事業者は、(中略)明示(中略)をするときは、次に掲げる事項を記載した書面の交付又は当該事項の電磁的方法による提供により、示さなければならない。
一 業務委託事業者及び特定受託事業者の商号、氏名若しくは名称(中略)
二 業務委託をした日
三 特定受託事業者の給付(中略)の内容
四 特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日(中略)
五 特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所
六 特定受託事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日
七 報酬の額及び支払期日

出典:公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則 第1条

第8号から第11号は、手形・ファクタリング・電子記録債権・資金移動業者の口座といった支払方法に関する項目で、第12号は明示時点で決められない事項がある場合の、その理由と決める予定の期日です。列挙のどこにも、エージェントが企業からいくら受け取っているか、そこから何%を引いているか、という項目はありません。

手数料に関する義務 根拠
労働者派遣 マージン率の情報提供 労働者派遣法23条5項
有料職業紹介 手数料の種類の限定(省令の手数料または届出制手数料) 職業安定法32条の3第1項
業務委託(フリーランス) なし フリーランス法3条・同施行規則1条に該当項目なし

つまり「マージンを教えてくれない」のは、エージェントの姿勢の問題である前に、教えることを求める規定がそもそも存在しないということです。

代わりに保証されているもの

手数料は分かりませんが、フリーランス法は別のところを固めています。

特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、(中略)特定受託事業者の給付を受領した日(中略)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第4条第1項

同条第2項では、支払期日が定められなかったときは受領日が、60日を超える期日が定められたときは受領日から60日を経過する日が、それぞれ支払期日とみなされます。

ただし、エージェント経由の案件には、この60日とは別の定めがあります。エージェントが企業から受けた仕事をフリーランスに再委託する形は、同条第3項の「再委託」に当たります。

前二項の規定にかかわらず、他の事業者(中略)から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(中略)の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合(前条第一項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日(中略)その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)には、当該再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第4条第3項

つまり、エージェントが「再委託であること」「元の発注企業の名称」「企業からエージェントへの支払期日(元委託支払期日)」を明示している場合は、フリーランスへの支払期日は受領日から60日ではなく、元委託支払期日から30日以内になります。企業からエージェントへの支払いが月末締め翌々月末なら、受領日から60日を超える支払期日でも違法ではありません。この明示がなければ、第1項の「受領日から60日」に戻ります。第4項では、第3項の場合に支払期日が定められなかったときは元委託支払期日が、30日を超える期日が定められたときは元委託支払期日から30日を経過する日が、支払期日とみなされます。どちらの場合も、期日をあいまいにしたまま先送りする、ということは法律上できません。

報酬額の明示と支払期日の上限。この2つは書面または電磁的方法で必ず明示され(電磁的方法で来た場合は、求めれば書面で交付されます。同法3条2項)、マージン率が分からなくても「自分がいくら受け取れるか」と「いつ入るか」は確定できます。相場との比較のしかたは単価相場はどこから来た数字かに、手取りベースの計算は単価50万円の手取りの記事にまとめています。

実務としてどうするか

1. まず契約の種類を確認する

派遣なら、マージン率は公表されています。派遣元事業主は事業所ごとに情報提供する義務があるので、その事業所の数字を見にいけば済みます。業務委託なら、公表を求める規定はありません。

案件紹介の形が「準委任契約でエージェントと契約する」となっていれば業務委託です。契約書の当事者が誰と誰かを見れば判断できます。

2. 手数料は交渉材料として扱う

開示義務がない以上、聞くこと自体は自由ですし、答えるかどうかも自由です。「教えてもらえないから不誠実だ」という評価にはなりません。

3. 提示額そのもので比較する

結局のところ、受け取る側にとって効くのは提示された報酬額です。マージン率が低くても元の単価が低ければ手取りは増えません。同じ案件を複数のエージェントが扱っていることもあるため、提示額を並べるほうが実利があります。

エージェントによって扱う案件の領域も企業側の予算帯も違うので、同じスキルでも提示額は変わります。

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まとめ

  • 派遣はマージン率の情報提供が義務。計算式(料金の平均額−賃金の平均額)÷料金の平均額まで条文に書かれている(労働者派遣法23条5項)
  • 有料職業紹介の手数料は種類が限られる。省令で定める手数料か届け出た手数料表に基づく手数料しか取れず、求職者からの徴収は原則禁止(職業安定法32条の3)
  • 業務委託にはどちらの義務もない。フリーランス法3条の明示事項は施行規則1条に列挙されているが、仲介事業者の手数料率は含まれていない
  • 代わりに報酬額の明示と支払期日の上限が定められている(同法3条・4条)。上限は原則として受領日から60日以内。エージェント経由の再委託で、再委託である旨・元の発注企業・元委託支払期日が明示されている場合は、元委託支払期日から30日以内(4条3項)
  • 確認する順番は、契約の種類 → 派遣なら公表値を見る → 業務委託なら提示額そのもので比較する

この記事で参照した一次情報

本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。適用される法律は契約の形態によって変わり、同じ「エージェント」と呼ばれるサービスでも派遣・職業紹介・業務委託が混在します。個別の契約についての判断は弁護士または所轄の労働局・公正取引委員会の窓口にご確認ください。法令は改正されることがあります。

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