個人事業主の健康保険どうする?国保 vs 任意継続【フリーランスエンジニア向け】

健康保険の切り替えを考えるイメージ。聴診器の上に置かれた健康保険証を模したカード お金・決済
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会社を辞めてフリーランスエンジニアになるとき、最初にぶつかる事務手続きのひとつが健康保険です。選択肢は大きく「国民健康保険」と「健康保険の任意継続」の2つ。ここでは制度の条件と、判断のポイントを整理します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。保険料の具体的な金額は自治体・協会けんぽの窓口で必ずご確認ください。

選択肢は2つ:国民健康保険 か 任意継続

  • 国民健康保険(国保): お住まいの自治体が運営する保険。前年の所得を基に、自治体ごとの計算式で保険料が決まる
  • 健康保険の任意継続(任継): 会社員時代に加入していた健康保険(協会けんぽ等)に、退職後も最長2年間、個人で加入し続ける制度

任意継続の加入条件と申請期限

任意継続に加入するには、退職日まで継続して2ヶ月以上の被保険者期間があることが条件です。そして申請期限は資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内と決まっており、過ぎると加入できません。独立の準備で忙しくなる時期ですが、ここは締め切りが厳格なので要注意です。

この20日という期限は、協会けんぽの運用ではなく健康保険法の条文で定められています。

第三十七条 第三条第四項の申出は、被保険者の資格を喪失した日から二十日以内にしなければならない。ただし、保険者は、正当な理由があると認めるときは、この期間を経過した後の申出であっても、受理することができる。

出典:健康保険法(大正十一年法律第七十号)第37条

ただし書きに「正当な理由があると認めるとき」とありますが、これは災害などを想定した例外規定です。独立の準備で忙しかった、というのは正当な理由になりません。20日は死守する前提で動いてください。

加入条件のほうは、協会けんぽが次のように示しています。

退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること
退職日の翌日から20日以内に手続すること

出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)任意継続

保険料の考え方

任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額をもとに計算されます。会社員時代は保険料を会社と折半していましたが、任意継続では会社負担分もすべて自己負担になるため、天引きされていた額のおおよそ2倍が目安になります。

ただし上限があります。この上限額を知らないと、高年収だった人ほど見積もりを誤ります。

退職時の標準報酬月額×お住まいの都道府県別保険料率(子ども・子育て支援金率を含む)
ただし、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合は、標準報酬月額は32万円で計算します

出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)任意継続

つまり退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた人は、実際の給与がいくらであっても32万円として計算されます。「天引き額の2倍」で見積もると高く出すぎるのはこのためです。年収が高かった人ほど、任意継続が相対的に有利になりやすいのはこの上限があるからです。

ここで注意したいのが、この32万円は協会けんぽの、しかも令和8年度(2026年度)の金額だという点です。健康保険法第47条は、任意継続の標準報酬月額を「資格を喪失したときの額」と「前年9月30日時点でその保険者に加入している全被保険者の平均額」のいずれか少ない額と定めています。後者は保険者ごとに違うので、健康保険組合に加入していた人の上限は32万円ではありません。

第四十七条 任意継続被保険者の標準報酬月額については、第四十一条から第四十四条までの規定にかかわらず、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額をもって、その者の標準報酬月額とする。
一 当該任意継続被保険者が被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額
二 前年(一月から三月までの標準報酬月額については、前々年)の九月三十日における当該任意継続被保険者の属する保険者が管掌する全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額(健康保険組合が当該平均した額の範囲内においてその規約で定めた額があるときは、当該規約で定めた額)を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額

出典:健康保険法(大正十一年法律第七十号)第47条

実際、令和8年度の上限額は組合によってこれだけ差があります。

  • 協会けんぽ: 32万円(令和7年9月30日時点の平均額318,100円に基づく)
  • 大阪産業機械工業健康保険組合: 41万円(同組合の平均額406,987円に基づく)
  • 日本電気健康保険組合: 50万円(前年度の47万円から改定)

組合健保だった人が「32万円で頭打ち」と思って計算すると、実際よりかなり安く見積もることになります。ご自身が加入していた保険者の公式サイトで、その年度の上限額を確認してください。

一方、国民健康保険の保険料は前年の所得をもとに、自治体ごとの計算式で決まります。フリーランス1年目は「前年=会社員時代の給与所得」で計算されるため、独立後の実際の手取りに対して想定より高く感じることがあります。

どちらが安いかは、前年の所得・お住まいの自治体・扶養家族の有無によって変わるため、本記事では具体的な金額は出しません。協会けんぽや自治体の窓口・シミュレーターで、実際の金額を試算することをおすすめします。

フリーランスならではの戦略:「1年目は任継、2年目に見直す」

2022年1月の制度改正により、任意継続は本人の申し出で脱退できるようになりました。以前は「一度加入したら2年間は原則やめられない」というルールでしたが、現在は国保への切り替えなどを理由に、自分から抜けられます。

ただし「いつでも即日で抜けられる」わけではありません。条文はこう定めています。

第三十八条 任意継続被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(第四号から第六号までのいずれかに該当するに至ったときは、その日)から、その資格を喪失する。
七 任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を、厚生労働省令で定めるところにより、保険者に申し出た場合において、その申出が受理された日の属する月の末日が到来したとき

出典:健康保険法(大正十一年法律第七十号)第38条第7号

読み解くと、申出が受理された月の末日が来て、その翌日に資格を失うという仕組みです。たとえば4月中に申出が受理されれば、資格喪失日は5月1日。月の途中で抜けることはできず、切り替えは月単位になります。国保への加入手続きもこの日付を前提に進めることになります。括弧内の第四号から第六号は、再就職などで健康保険の被保険者になったとき、船員保険の被保険者になったとき、後期高齢者医療の被保険者等になったときの定めで、この3つは翌日ではなくその日に資格を失います。

この第38条第7号は、条文の改正履歴に「令三法六六」と記されています。令和3年法律第66号(全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律)による改正で、2022年1月から適用されています。

これにより、次のような柔軟な戦略が取れます。

  • 独立1年目: 前年の給与所得を基にした国保が高くなりやすいので、任意継続を選ぶ
  • 独立2年目以降: 事業所得が確定し、国保の保険料が下がったタイミングで国保に切り替える

扶養家族がいる場合は、国保だと世帯人数分の保険料がかかる一方、任意継続なら要件を満たす被扶養者に追加保険料がかからないケースもあるため、この点も判断材料になります。

まとめ

  • 任意継続は退職後20日以内の申請が必須。健康保険法第37条に定められた期限で、忙しくても死守する
  • 保険料は「任継=退職時の標準報酬月額ベース(協会けんぽなら令和8年度の上限32万円。組合健保は組合ごとに異なる)」「国保=前年所得+自治体の計算式」で決まり方が異なる
  • 2022年の改正で任意継続は申し出て脱退できるようになったが、資格喪失は申出が受理された月の末日を過ぎてから。月単位での切り替えになる
  • 「1年目は任継、2年目に国保へ切り替え」という戦略も選択肢に入る

この記事で参照した一次情報

本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。標準報酬月額の上限や保険料率は年度により変わるため、最新情報は協会けんぽおよびお住まいの自治体の公式サイトでご確認ください。

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