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会社員時代は毎月決まった額の給与が振り込まれていましたが、フリーランスになると収入は案件によって波打つようになります。ここでは、独立後に見落としがちな「予定納税」の落とし穴と、収入の波に備える制度を紹介します。あわせて、2026年(令和8年)分に特有の注意点も確認します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務・資金繰りの判断は税理士にご相談ください。
2年目以降に来る「予定納税」に注意
独立1年目はあまり意識しなくても、2年目以降に思わぬ落とし穴になりやすいのが「予定納税」です。前年の申告納税額をもとに計算した金額(予定納税基準額)が一定額以上になると、その年の所得税の一部を前もって納めることになります。基準は国税庁が次のように示しています。
予定納税基準額が15万円以上になる方は、予定納税が必要になります。
納める額の決まり方も、あわせて示されています。
予定納税基準額の3分の1の金額を、第1期分および第2期分として2回納付することとなります。
納付期間は第1期分がその年の7月1日から7月31日まで、第2期分が11月1日から11月30日までです。対象になる場合は、その年の6月15日までに税務署から通知が届きます。
ここで注意したいのは、予定納税額が前年の実績を基準に計算されるという点です。前年は好調だったのに今年は案件が減っている、というタイミングで通知が来ると、資金繰りを圧迫します。しかも基準額の3分の1を2回なので、前年の税額が大きいほど夏と秋の負担が重くなります。
2026年分は「基礎控除が増えても予定納税は減らない」
2026年(令和8年)分には、もうひとつ知っておきたい点があります。令和8年度の税制改正で基礎控除の見直しが入っていますが、これは予定納税額の計算には反映されません。
令和8年度税制改正における基礎控除の見直しについては、申告納税見積額の計算上、考慮されません。基礎控除の見直しは、確定申告の際に考慮され、最終的な年間の所得税額において精算されます。
控除が増えて年間の税額が下がる見込みでも、予定納税の通知額はその分だけ小さくなるわけではない、ということです。同じページには、次に説明する減額申請の理由としても基礎控除の見直しは使えないと明記されています。差額は確定申告で精算されるので最終的に払いすぎにはなりませんが、その年のキャッシュフローだけを見ると、一時的に多めに前払いする形になります。
減額申請の期限は7月15日と11月15日
実際の所得が見込みより少ないときは、予定納税額の減額を申請できます。ただし期限が短く、通知が届いてから1ヶ月ほどしかありません。
第1期分及び第2期分の減額申請については、その年の7月1日から7月15日までに提出してください。
第2期分のみの減額申請及び特別農業所得者の減額申請については、その年の11月1日から11月15日までに提出してください。
判定の基準日は、第1期分・第2期分の申請ならその年の6月30日、第2期分のみの申請なら10月31日の現況です。その日の時点で見積もった申告納税見積額が、通知された予定納税基準額を下回る見込みであることが条件になります。
国税庁が挙げている例のうち、フリーランスエンジニアに当てはまりやすいのは次の2つです。
- 廃業や休業、失業をした場合
- 業況不振などのため、本年分の所得が前年分の所得よりも明らかに少なくなると見込まれる場合
常駐案件が切れて次が決まっていない、単価が下がった、といったケースは2つ目に当たります。7月15日を過ぎてしまっても、11月15日の第2期分だけなら間に合うことがあります。通知が来た時点で、両方の期限をカレンダーに入れておくのが安全です。
申請には年の途中で所得を締める必要がある
ここで実務上の壁になるのが、申請書に添える書類です。
[添付書類]申告納税見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類を提出してください。
見積額を出すだけでなく、その根拠になる事実を書類で示すことが求められます。つまり年の途中で、その時点までの売上と経費を締められる状態になっていないと、申請そのものに取りかかれません。確定申告の直前にまとめて帳簿をつける進め方だと、7月15日の時点で材料がそろっていないことになります。
日々の取引が帳簿に入っていれば、見積額はその集計から出せます。減額申請を使う可能性があるなら、期中の記帳を止めないことが前提条件になります。
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収入の波を平準化する制度:小規模企業共済
個人事業主が使える代表的な制度に「小規模企業共済」があります。廃業や退職後の資金を積み立てるための制度で、中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。掛金の設定はかなり柔軟です。
月額1,000円~最高70,000円の範囲内(500円単位)で自由に設定できます。
掛金は税法上、全額を小規模企業共済等掛金控除として、課税対象となる所得から控除できます。また、1年以内の前納掛金も同様に控除できます。
収入が多い年は掛金を増やして所得控除を厚くし、少ない年は下限の1,000円まで下げる、という調整ができます。増額・減額はどちらも500円単位で、加入後に変更できます。共済金の受け取り方は一括・分割・併用から選べ、一括なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得として扱われます。
小規模企業共済は240ヶ月が分かれ目
節税しながら積み立てられる制度ですが、途中でやめると元本を割ります。
納付した掛金に対して100%以上の解約手当金をお受け取りいただけるのは、掛金納付月数が240か月(20年)以上からです。掛金納付月数が、240か月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛金合計額を下回ります。
加入して間もない時期の解約は、さらに厳しくなります。
準共済金・解約手当金の「請求事由」が生じた場合であっても、掛金納付月数が12ヶ月未満の場合は、準共済金・解約手当金はお受け取りいただけません。
ここで効いてくるのが、掛金を下げられるという先ほどの仕組みです。240ヶ月は20年で、独立直後にそこまで見通すのは難しい。上限の70,000円で始めて払えなくなり解約するより、1,000円で始めて余裕が出た年に増やすほうが、元本割れを避けやすくなります。なお、廃業などによる受け取り(共済金A・共済金B)は、自己都合の任意解約とは別の区分として扱われます。
入金サイクルのタイムラグにも備える
フリーランスの案件は、納品・検収から実際の入金までに1ヶ月以上のタイムラグがあることも珍しくありません。契約時点で入金サイクルを確認し、手元の運転資金にある程度の余裕を持たせておくと、急な支払いにも慌てずに済みます。
タイムラグそのものを埋める手段として、請求書を先に現金化するサービスもあります。ただし金融庁は、ファクタリングを装った実質的な貸付けについて注意喚起を出しています。買い戻しの義務がないか、手数料が総額でいくらになるかを、契約前に必ず確認してください。判断の材料は生活防衛資金の記事にまとめています。
フリーランス向けの請求書買取サービス
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とはいえ、手数料を払って先に受け取るのは一時しのぎです。予定納税のように時期と金額が事前に分かっている支出は、通知が来た段階で先に取り分けておくほうが確実です。
まとめ
- 予定納税は前年の実績が基準。予定納税基準額が15万円以上なら、その3分の1を7月と11月の2回前払いする
- 2026年分は基礎控除の見直しが予定納税額に反映されない。差額は確定申告で精算される
- 所得が前年より明らかに少ない見込みなら減額申請ができる。期限は7月15日と11月15日
- 減額申請には申告納税見積額を自分で出す必要がある。期中の記帳が止まっていると、見積もりの材料がそろわない
- 小規模企業共済は掛金が全額所得控除になるが、240ヶ月未満の任意解約は掛金合計額を下回る
- 納品から入金までのタイムラグを見込んで、運転資金に余裕を持たせておく
この記事で参照した一次情報
- 国税庁 No.2040 予定納税(予定納税基準額15万円以上という基準、基準額の3分の1を2回納付すること、通知が6月15日までであることを確認)
- 国税庁 A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続(減額申請の提出期限と対象になる場合、申告納税見積額を計算して提出すること、令和8年度税制改正の基礎控除の見直しが申告納税見積額の計算に含まれないことを確認)
- 中小機構 小規模企業共済の掛金(掛金月額の範囲と500円単位であること、全額が所得控除になることを確認)
- 中小機構 共済金等請求・解約(12ヶ月未満では準共済金・解約手当金を受け取れないことを確認)
- 中小機構 解約手当金の額の算定方法(240か月未満の任意解約で掛金合計額を下回ることを確認)
本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。参照した国税庁のページは令和8年6月1日現在の法令等にもとづくものです。税制や共済制度の要件は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁および中小企業基盤整備機構の公式サイトでご確認ください。

