個人事業主の固定資産台帳の書き方|法令にその名の帳簿はなく、パソコンは10万・20万・40万円で載せ方が変わる

白い木目の机に置かれた色とりどりのクリップとコーヒーカップ、ペンを載せたタブレットとノート 経費
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

開発機を20万円で買い替えた年の年末、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄を前にして手が止まったことがあります。「固定資産台帳 書き方」で検索すると、記載項目の一覧とExcelのテンプレートは出てくるのですが、そもそもこの帳簿を作らないと青色申告にならないのか、10万円のモニタや18万円のパソコンも載せるのか、という手前の疑問には答えが見つかりませんでした。

所得税法と施行規則、財務省の告示を読むと、「固定資産台帳」という名前の帳簿を義務づけた条文はありませんでした。あるのは「減価償却資産に関する事項」を記録する決まりで、国税庁がその帳簿を固定資産台帳と呼んでいます。載せ方は取得価額が10万円・20万円・40万円のどの帯にあるかで分かれ、1円の差で扱いが変わります。

この記事では、固定資産台帳の法令上の位置づけと青色申告特別控除との関係、取得価額の帯ごとの載せ方、パソコン20万円を2026年4月に買った場合の初年度の計算、捨てたときと売ったときの扱いを、条文・告示・国税庁の手引きで確定させます。40万円への引き上げそのものは少額減価償却資産の特例の記事、兼用パソコンの按分は家事按分の仕訳の記事で扱ったので、この記事は台帳に何をどう書くかに絞ります。

先に結論

  • 「固定資産台帳」という語は法令にありません。青色申告者に求められているのは、減価償却資産について取得年月日・相手方・数量・取得価額・年初の償却後の価額などを資産ごとに記録すること(所得税法148条、施行規則58条、昭和42年大蔵省告示第112号 別表第一(七))で、年末に一括記載してもよいとされています。この帳簿を含む簡易帳簿だけなら控除は10万円で、55万円・65万円は複式簿記と貸借対照表が条件です
  • 載せ方は取得価額の帯で分かれます。10万円未満は全額経費、10万円以上20万円未満は一括償却資産(3年で3分の1ずつ)、20万円以上は減価償却。青色申告なら10万円以上40万円未満を年300万円まで即時償却できます(2026年4月1日以後の取得分。租税特別措置法28条の2)。パソコン20万円ちょうどは「20万円未満」に入らないので、減価償却か40万円未満の特例のどちらかになります
  • パソコンの耐用年数は4年、定額法の償却率は0.250、年の中途で使い始めた年は月割りです。2026年4月に20万円のパソコンを買って減価償却するなら、初年度の償却費は200,000円×0.250×9/12=37,500円。一括償却資産は月割りせず、壊れて捨てても3年の均等償却を続けます(所得税基本通達49-40の2)

法令にあるのは「減価償却資産に関する事項」。固定資産台帳はその帳簿の呼び名

青色申告の承認を受けた人は、所得税法148条で帳簿書類を備え付けて取引を記録することが求められ、施行規則58条がその帳簿を「仕訳帳」「総勘定元帳」「その他必要な帳簿」とし、記載事項は財務大臣が定めるとしています。施行規則56条1項ただし書きには、複式簿記に代えて「財務大臣の定める簡易な記録の方法」によれる規定があり、その中身を定めているのが昭和42年の大蔵省告示第112号です。別表第一の(七)が減価償却資産の項目です。

(七) 減価償却資産(繰延資産を含む。)に関する事項
記載事項:その資産の種類ごとに、それぞれその取得又は支出の年月日、取得又は支出の相手方、数量、取得価額又は支出金額及びその年の年初の償却後の価額並びにその年中におけるその他の取引の年月日、事由、相手方及び金額
備考:年末において、その年中の取引を一括記載することができる。

出典:財務省 昭和42年大蔵省告示第112号 別表第一 一 事業所得の部(イ)一般の部(PDF)(最終改正 令和2年3月31日財務省告示第77号。原文は表で、第一欄の記載事項と第二欄「簡易な記録の方法」の備考を並べた。「記載事項:」「備考:」はこの記事で付けた見出し)

この告示にも「固定資産台帳」の語はありません。国税庁のタックスアンサーNo.2070が「現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよい」と書き、「帳簿の記帳のしかた」(令和8年5月版)が「この台帳は年末にまとめて記載しても構いません」と案内しているので、5帳簿の1つとして定着した呼び名です。法令上の最小限は、告示の(七)の項目を資産ごとに書いてあることです。

控除額との関係も、ここで分かれます。租税特別措置法25条の2で、55万円は「正規の簿記の原則」(一般には複式簿記)で記帳して貸借対照表と損益計算書を添付し期限内に申告した場合、65万円はさらに優良な電子帳簿保存かe-Taxでの申告が条件で、簡易帳簿だけなら10万円です。台帳の有無が55万円・65万円を左右するわけではありません。白色申告には固定資産台帳の定めはなく、昭和59年大蔵省告示第37号で費用の項目として「減価償却費」を記録し、額は収支内訳書の「減価償却費の計算」欄で出す形です。

載せ方は10万・20万・40万円の帯で変わる。20万円ちょうどは「未満」に入らない

減価償却資産を買ったとき、台帳と決算書にどう載せるかは取得価額の帯で決まります。条文はすべて所得税法施行令と租税特別措置法にあり、境界の判定は次のとおりです。

取得価額(1単位ごと) 処理 根拠と決算書への書き方
10万円未満 その年の全額を必要経費(消耗品費など)。台帳に載せない 所得税法施行令138条。減価償却費の計算欄に書かない
10万円以上20万円未満 一括償却資産。合計額の3分の1ずつを3年の各年の経費に 同139条。償却率欄に「1/3」、償却期間欄は使わない。明細書を添付
20万円以上 減価償却。耐用年数と償却率で各年の償却費を計算 同120条の2第1項2号(届出がなければ125条の法定償却方法=定額法)。132条の月割り
青色:10万円以上40万円未満 少額減価償却資産の特例。その年に全額を必要経費(年300万円まで) 租税特別措置法28条の2。摘要欄に「措法28の2」、明細書を添付

出典:所得税法施行令120条の2・132条・138条・139条、租税特別措置法28条の2、国税庁 No.2100(注1〜3)、「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」4ページ目(2026年10月5日時点)

判定は「未満」で切られているので、境界の値がどちらに入るかを1つずつ見ます。99,999円は10万円未満で全額経費、100,000円は10万円以上なので一括償却資産か特例の対象です。199,999円は20万円未満で一括償却資産にできますが、200,000円は「二十万円未満」から外れるので一括償却資産にはなりません。20万円のパソコンは、白色なら減価償却、青色なら40万円未満の特例か減価償却かを選ぶ形になります。399,999円までが特例の対象で、400,000円からは減価償却だけです。

金額の見方には2つ注意があります。税込か税抜かは経理方式で決まり、No.2100の注5は「免税事業者の経理方式は税込経理になります」としているので、免税事業者が税抜19万円のパソコンを買うと判定は税込20万9,000円です。単位は所得税基本通達49-39で「1個、1組又は1そろいごとに判定」です。本体とディスプレイを1組で買えば合計額の判定になりますが、どこまでを1そろいと見るかは個別の判断です。

青色申告の特例は、2026年4月1日以後に取得した分から上限が30万円未満から40万円未満に上がりました(租税特別措置法28条の2、2029年3月31日までの取得分)。対象は常時使用する従業員が400人以下の個人で(同施行令18条の5第1項)、年の合計300万円が上限、開業した年はその300万円を月割りします。マネーフォワード クラウド確定申告のサポートページ(2025年11月10日更新)では「30万円未満」「常時使用する従業員の数が1,000人以下」と書かれたままで、現行の条文とは数字が違います。同じ資産に一括償却資産と特例の両方は使えません(同施行令18条の5第2項1号)。

台帳に書く項目と、パソコン20万円の初年度の計算

「帳簿の記帳のしかた」の記載例は、資産ごとに種類・取得年月日・耐用年数・償却方法・償却率を頭書きにして、取得・償却額・未償却残高・事業専用割合・必要経費算入額を行で記録する形です。青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄も列がほぼ同じなので、台帳の1行がそのまま決算書の1行になります。2026年4月に20万円のパソコンを買って減価償却する場合で並べると次のとおりです。

項目 記載例 根拠
名称・取得年月・取得価額 パソコン・2026年4月・200,000円 告示112号 別表第一(七)。取得価額は購入代価+付随費用(施行令126条)
耐用年数・償却方法・償却率 4年・定額法・0.250 耐用年数省令 別表第一「パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。)」、別表第八
本年中の償却期間 9か月(4月〜12月) 施行令132条。1か月未満の端数は1か月
本年分の償却費 200,000×0.250×9/12=37,500円 施行令120条の2、132条。翌年からは50,000円
事業専用割合・必要経費算入額 100%・37,500円(兼用なら割合を掛ける) 「帳簿の記帳のしかた」16ページ目の記載例
未償却残高 200,000-37,500=162,500円 決算書の書き方「㋦未償却残高」。1円になるまで償却(施行令134条)

出典:告示第112号、耐用年数省令 別表第一・第八、所得税法施行令120条の2・126条・132条・134条、国税庁「帳簿の記帳のしかた」(令和8年5月版)、「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」(2026年10月5日時点)

サーバー用のパソコンは耐用年数5年・償却率0.200です。償却方法は届け出なければ定額法です(No.2100)。月割りの起点は「業務の用に供された日」なので、3月に買って4月から使い始めたなら9か月です。2年目以降は年50,000円で、4年目までの累計は37,500+50,000×3=187,500円、5年目は上限までの12,499円を償却して帳簿価額1円が残ります(取得価額から1円を引いた額が償却の上限。施行令134条1項2号イ)。

一括償却資産はこの計算をしません。18万円のモニタなら、買った月に関係なく初年度から3年間、毎年60,000円です。決算書の書き方でも、一括償却資産の行は償却率欄に「1/3」と書き、償却期間の月数欄は使いません。特例で即時償却する資産は、取得価額を合計して1行にまとめ、摘要欄に「措法28の2」と書く記載例になっています。

捨てたとき、売ったとき。一括償却資産は3年の均等を続ける

資産を使わなくなったときの扱いも帯で分かれます。20万円以上で減価償却している資産を除却したら、未償却残高が資産損失として必要経費になります(所得税法51条1項、施行令142条1号)。年の中途で除却した場合は、その年の償却費の計算を省略して、償却前の残高をそのまま損失にすることもできます(「青色申告の決算の手引き」30(4))。一括償却資産は違います。

49−40の2 令第139条第1項に規定する一括償却資産につき同項の規定の適用を受けている場合には、その一括償却資産を業務の用に供した年以後3年間の各年においてその全部又は一部につき滅失、除却等の事実が生じたときであっても、当該各年においてその一括償却資産につき必要経費に算入する金額は、同項の規定に従い計算される金額となることに留意する。(平11課所4−1追加)
(注) 一括償却資産の全部又は一部を譲渡した場合についても、同様とする。

出典:国税庁 所得税基本通達 49−40の2(一括償却資産につき滅失等があった場合の取扱い)

2年目に壊れて捨てても、残りを一気に経費にはせず、3年目まで3分の1ずつ計上する形です。売ったときの代金も帯で所得区分が変わり、減価償却している資産の売却代金は原則として譲渡所得(総合課税。50万円の特別控除があり、取得から5年超なら2分の1)、10万円未満の資産と一括償却資産の売却代金は事業所得です(業務の性質上基本的に重要なものを除く。決算の手引き12、No.3105)。エンジニアの開発機はこの「業務の性質上基本的に重要なもの」に当たり得るので、その場合は譲渡所得の側で扱います。特例で即時償却した資産の売却は、国税庁のページに明文が見つからなかったので、この記事では断定しません。

見落としやすいのが市町村の償却資産税です。10万円未満の資産と一括償却資産は対象から外れていますが(地方税法施行令49条)、租税特別措置法28条の2で即時償却した資産は外れていません。「少額だから固定資産税はかからない」とは一般化できず、課税標準の合計が150万円以上になれば課税されます(地方税法351条)。

実務としてどうするか

1. 買った月に、取得価額を1単位ごとに税込か税抜で決めて帯に当てはめる

領収書の金額を、自分の経理方式(免税事業者なら税込)で読み、1個・1組ごとに10万円・20万円・40万円の帯に当てはめます。10万円未満なら消耗品費で終わり、台帳には載せません。10万円以上なら、一括償却資産・減価償却・青色の特例のどれにするかを決め、告示の項目(取得年月日・相手方・数量・取得価額)を台帳の行に書きます。年末にまとめて書いてもよいのですが、買った月を忘れると月割りの月数が出せなくなります。

2. 決算書の「減価償却費の計算」欄は台帳の行をそのまま転記する

台帳の頭書き(耐用年数・償却方法・償却率)と行(取得価額・償却期間・償却費・事業専用割合・未償却残高)が揃っていれば、決算書の欄は転記で埋まります。一括償却資産は償却率欄に「1/3」と書いて月数欄を空け、特例を使った資産は合計額で1行にして摘要欄に「措法28の2」と書き、明細書を添付します。除却した年は摘要欄に月日と事由を書きます。

3. 台帳は会計ソフトの固定資産台帳機能で持つ

freee会計は固定資産台帳に登録すると「自動で減価償却費の計算と減価償却費仕訳の登録」が行われ、償却方法に「定額法」「一括償却」「少額償却」を選ぶ形です(ヘルプ2026年9月8日更新。少額償却は2026年4月1日以降に使い始めた資産なら40万円未満)。マネーフォワード クラウド確定申告は「決算・申告」の「固定資産台帳」に登録し、「青色申告決算書への計上」にチェックを入れると「減価償却費の計算」欄に自動で反映されます。どちらも事業利用の割合を入力する欄があり、兼用のパソコンはそこで按分します。月数・償却率・未償却残高を自分で計算する作業が、登録1回で済む形になります。

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まとめ

  • 「固定資産台帳」の語は法令になく、減価償却資産ごとに取得年月日・相手方・数量・取得価額・年初の償却後の価額を記録する帳簿(告示112号 別表第一(七))を国税庁がそう呼んでいる。年末一括記載可。簡易帳簿だけなら控除は10万円
  • 10万円未満は全額経費、10万円以上20万円未満は一括償却資産、20万円以上は減価償却、青色なら10万円以上40万円未満を年300万円まで即時償却。20万円ちょうどは一括償却資産にならない。判定は経理方式(免税事業者は税込)と1単位ごと
  • パソコンは耐用年数4年・定額法0.250・月割り。2026年4月取得の20万円なら初年度37,500円、翌年から50,000円。一括償却資産は月割りなしで毎年3分の1
  • 一括償却資産は捨てても売っても3年の均等償却を続ける(所基通49-40の2)。売却代金は事業所得(業務の性質上基本的に重要なものを除く)。償却資産税は一括償却資産が対象外で、特例の資産は対象(免税点150万円)

あわせてどうぞ

40万円への引き上げの根拠と税込・税抜の判定は少額減価償却資産の特例の記事に、兼用パソコンの事業専用割合と年末の按分仕訳は家事按分の仕訳の記事に、何が経費になるかの一覧は経費チェックリストの記事に、会計ソフトの選び方はクラウド会計ソフト比較の記事にまとめています。

この記事で参照した一次情報

本記事は2026年10月時点で上記の一次情報を確認して書いています。少額減価償却資産の特例の金額と期限、償却資産税の免税点、会計ソフトの画面の表記は変わることがあります。法令は改正されることがあるため、最新の情報および個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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