パソコンを捨てた・売ったときの固定資産台帳|除却損は経費、売却代金は原則譲渡所得、一括償却資産は3年均等を続ける

白い机に置かれたノートパソコンと2台のキーボード、タブレット、積まれた書類ファイル 経費
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

開発機を買い替えたあと、固定資産台帳に残った古いパソコンの行をどう消すかで手が止まったことがあります。「固定資産台帳 除却」「一括償却資産 売却」で検索すると「固定資産売却益」の仕訳例が並ぶのですが、どれも法人向けで、個人事業主がそのまま使ってよいのかが分かりませんでした。

所得税法と施行令、国税庁の「青色申告の決算の手引き」を読むと、個人は法人と扱いが違いました。捨てたときの未償却残高は事業所得の必要経費ですが、売ったときの代金は譲渡所得で、50万円の特別控除があります。

この記事では、減価償却中のパソコンを捨てたとき・売ったとき・下取りに出したときの処理を、取得価額の帯ごとに条文と手引きで確定させ、台帳の締め方と申告書への書き方まで追います。台帳に何を載せるかと10万・20万・40万円の帯は固定資産台帳の書き方の記事で扱ったので、この記事は「台帳から外すとき」に絞ります。

先に結論

  • 減価償却している資産を捨てたら、未償却残高がその年の必要経費(除却損)になります(所得税法51条1項、施行令142条1号)。年の途中なら、その年の償却費は計算を省略できます(決算の手引き30⑷)
  • 売った代金は事業所得ではなく譲渡所得です(所得税法33条、施行令81条、手引き12)。売却代金から未償却残高と売却費用を引き、50万円の特別控除を差し引いた残りが所得で、損が出れば事業所得と損益通算できます(33条4項、69条1項)
  • 例外が2つあります。10万円未満と一括償却資産は売却代金が事業所得で、一括償却資産は捨てても売っても3年均等を続けます(施行令81条、所得税基本通達49-40の2)。40万円未満の特例で即時償却した資産は取得費が0円で、代金の全額が譲渡益です(租税特別措置法28条の2第4項)

捨てたとき:未償却残高が除却損。その年の償却費は省略できる

所得税法51条1項は、事業の用に供される固定資産について「取りこわし、除却、滅失…その他の事由により生じた損失の金額」をその年分の事業所得の必要経費に算入すると定めています。損失の額は施行令142条1号で、損失の日に譲渡があったものとみなした取得費、つまり未償却残高です。年の途中で捨てたときに、その年の償却費を月割りで計算するかどうかは、決算の手引きに答えがありました。

⑷ 資産の取壊しなどをした場合……減価償却資産で年の中途で取壊しや除却、滅失したものについても、その年の取壊しなどしたときまでの減価償却費の計算を省略することができます。
(注1) この場合、その年の減価償却費を差し引かないままの金額が取壊し損などとして必要経費に算入されることになります。
(注2) 「27 一括償却資産」の適用を受けている場合には、その全部又は一部につき滅失、除却等の事実が生じたときであっても、必要経費に算入する金額は、「27 一括償却資産」の規定に従い計算した金額となります。

出典:国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」(PDF)(15ページ目「30 減価償却費の計算の特例」の⑷。年の中途で除却した資産の償却費を省略できることと、一括償却資産は別扱いであることを確認)

固定資産台帳の記事と同じ、2026年4月に20万円で買ったパソコン(耐用年数4年、定額法、償却率0.250)を、2028年6月30日に捨てた場合で置きます。2026年分の償却費は200,000円×0.250×9/12=37,500円、2027年分は50,000円で、2028年1月1日の未償却残高は112,500円でした。

項目 償却費を省略する 償却費を計算する
2028年分の償却費 0円 200,000×0.250×6/12=25,000円
除却損(未償却残高) 112,500円 112,500-25,000=87,500円
2028年分の必要経費の合計 112,500円 112,500円
決算書の摘要欄 「6月30日 除却・償却省略」 「6月30日 除却」(償却期間6か月)

どちらでも必要経費の合計は変わらず、省略するほうが台帳の行が1本で済みます。回収や処分の費用を払ったときはその付随費用を除却損に足し、廃材に買取額が付けばその分を引きます(決算の手引き❺)。決算書の「減価償却費の計算」欄の摘要には、譲渡や取壊しをした資産の「その月日、事由など」と、償却を省略した場合は「その旨」を書く決まりです(決算書の書き方4ページ目)。

売ったとき:代金は譲渡所得。未償却残高を引いて50万円控除

ここが法人向けの仕訳例と一番違うところです。所得税法27条1項は事業所得から「譲渡所得に該当するもの」を除いていて、減価償却資産の売却は33条の譲渡所得です。決算の手引き12も「減価償却資産の売却代金は、原則として、譲渡所得の収入金額になり、事業所得の収入金額にはなりません」と書いています。

計算は33条3項・4項のとおり、売却代金-(取得費+譲渡費用)-特別控除50万円です。取得費は38条2項で取得価額から償却費の累積額を引いた金額、つまり未償却残高です。売った年の償却費は、取得費に含めるか、その年の必要経費にするかを選べます(手引き30⑶)。取得から5年以内の譲渡は短期で全額が、5年超は長期で2分の1が総所得金額に入ります(33条3項、22条2項2号)。

2028年6月30日に売却 30,000円で売れた 150,000円で売れた
取得費(未償却残高) 112,500円 112,500円
譲渡益 △82,500円(譲渡損) 37,500円
特別控除後の譲渡所得 △82,500円 0円(37,500円全額を控除)
税額への効き方 事業所得から差し引く(損益通算) なし

売却損は所得税法69条1項で他の所得から控除できます。事業用パソコンは「生活に通常必要でない資産」(62条)ではないので通算の対象です。売却益が出ても、その年の総合課税の譲渡益の合計が50万円以内なら特別控除で所得は0です(33条4項)。申告書には「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)【総合譲渡用】」で計算して転記し、土地・建物用の内訳書や分離課税の第三表は使いません。

10万円未満と一括償却資産は事業所得。一括償却資産は3年続ける

施行令81条は、譲渡所得に含まれない資産として、10万円未満で全額経費にした資産(138条)と一括償却資産(139条)を列挙しています。この2つを売った代金は事業所得の収入(雑収入)です(手引き12の①②)。一括償却資産は処分しても償却のペースが変わりません。所得税基本通達49-40の2は、3年間の各年に滅失・除却があっても必要経費に算入する金額は「同項の規定に従い計算される金額となる」とし、注で譲渡も同様としています。2026年に15万円の一括償却資産を取得して2027年に捨てても、2027年分と2028年分の50,000円は変わらない形です。

ただし、どちらの帯にも「その者の業務の性質上基本的に重要なものを除く」の括弧書きがあり、重要なものは譲渡所得に戻ります。所得税基本通達33-1の2はこれを「役務の提供等その者の目的とする業務の遂行上直接必要な減価償却資産で当該業務の遂行上欠くことのできないもの」と定義しています。開発機はこの定義に当たり得るので、10万円未満や一括償却資産でも、売却代金をどちらに入れるかはその資産が業務に欠かせないものだったかで決まります。迷う場合は税務署に確認するのが確実です。

40万円未満の特例で即時償却した資産を売ると、取得費は0円

固定資産台帳の記事では、租税特別措置法28条の2(10万円以上40万円未満の即時償却)を使った資産を売った場合を、国税庁のページに明文がなく断定しませんでした。答えは同じ28条の2の第4項にありました。

4 第一項の規定の適用を受けた少額減価償却資産について所得税に関する法令の規定を適用する場合には、同項の規定によりその年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入された金額は、当該少額減価償却資産の取得価額に算入しない。

出典:e-Gov法令検索 租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第28条の2第4項(2026年10月1日施行版。特例で必要経費にした金額は取得価額に算入しないことを確認。強調は筆者)

必要経費にした金額を取得価額から外すので、取得費は0円です。施行令81条の列挙にこの特例の資産は入っていないため、所得区分は譲渡所得のままです。2026年に35万円のパソコンを即時償却し、2028年に10万円で売れたら譲渡益は100,000円で、同じ年に他の総合課税の譲渡益がなければ50万円の特別控除で所得は0になります。帯ごとの処理を表にまとめます。

取得価額の帯(処理) 捨てたとき 売ったとき
10万円未満(全額経費) 処理なし 事業所得(雑収入)※
10万円以上20万円未満(一括償却) 3年均等を続ける 事業所得(雑収入)※。3年均等を続ける
10万円以上40万円未満(措法28の2) 処理なし 譲渡所得。取得費0円、50万円控除
20万円以上(減価償却) 未償却残高が除却損 譲渡所得。未償却残高が取得費、50万円控除

※業務の性質上基本的に重要なものは譲渡所得。

下取りは「売却+購入」。課税事業者なら売却は課税売上、廃棄は不課税

古い機材を下取りに出した場合は、値引きではなく、旧資産の売却と新資産の購入が同時に起きたものとして処理します。国税庁は譲渡を「有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為」とし、交換も含めています(タックスアンサーNo.3105)。下取り価格が旧資産の売却代金、新資産の取得価額は下取り分を引く前の購入価格です。消費税でも下取り価額を控除した後の金額を売上にはできません(消費税法基本通達10-1-17)。

消費税は、免税事業者なら関係しません。課税事業者なら、事業に使っていた資産の売却は「事業として行う取引」で課税売上です(No.6109、消費税法基本通達5-1-7(3))。簡易課税では本業の第五種ではなく第四種事業(みなし仕入率60%)で(同13-2-9)、2割特例の年は売却分も課税売上に入るので、その分を含めた売上税額の2割が納税額です(国税庁「2割特例の概要」。仕組みは2割特例が終わったらの記事)。捨てただけなら対価がないので不課税です(No.6157(6))。

実務としてどうするか

1. 台帳の行を「月日・事由」で締め、証拠を残す

台帳の該当行に除却日または売却日と事由を書き、未償却残高を0円にします。除却は捨てた事実と日付が分かるもの(回収の伝票、処分券、写真)、売却は入金の明細と相手先が分かるもの(フリマアプリの取引画面、買取店の明細)を台帳と一緒に残します。

2. 売却は内訳書【総合譲渡用】へ、帳簿は事業主勘定で

売却代金と未償却残高、売却費用を内訳書に移し、50万円控除後の金額を申告書に転記します。事業所得の帳簿では差額を事業主借・事業主貸で受け、売上や雑収入に混ぜません。

3. 会計ソフトの固定資産台帳で異動処理をする

freee会計は固定資産台帳の資産を開き「異動処理」から「除却」「売却」を選ぶと、その日までの減価償却費を「計算する/しない」を選んで仕訳が切られ、売却の差額は事業主借・事業主貸で事業所得から外れます。下取りも「旧資産の売却」と「新資産の購入」の2本で登録する案内です。マネーフォワード クラウド確定申告は「固定資産台帳」で資産に「消失日(除却/売却等の日付)」を登録すると翌年度への繰越残高が0になります。

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まとめ

  • 減価償却中の資産を捨てたら、未償却残高が除却損として事業所得の必要経費(所得税法51条1項、施行令142条1号)。その年の償却費は省略でき、計算しても合計は同じ(手引き30⑷)
  • 売った代金は事業所得ではなく譲渡所得(33条、施行令81条、手引き12)。売却代金-未償却残高-譲渡費用から50万円を控除し、損なら事業所得と損益通算(69条1項)
  • 10万円未満と一括償却資産の売却代金は事業所得(施行令81条2号・3号)。一括償却資産は捨てても売っても3年均等(所基通49-40の2)。業務の性質上基本的に重要なものは譲渡所得
  • 40万円未満の特例で即時償却した資産は取得費0円で、代金の全額が譲渡益(措法28条の2第4項)。50万円控除の範囲なら所得は0
  • 下取りは「旧資産の売却+新資産の購入」。課税事業者の売却は課税売上、簡易課税なら第四種、廃棄は不課税

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この記事で参照した一次情報

本記事は2026年10月時点で上記の一次情報を確認して書いています。譲渡所得の特別控除額、少額減価償却資産の特例の期限、会計ソフトの画面の表記は変わることがあります。兼用していた資産の取得費の計算や、売却代金を事業所得と譲渡所得のどちらに入れるかの判断は個別の事情によるため、最新の情報および個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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