本記事はアフィリエイト広告を含みます。
確定申告や日々の記帳を効率化するなら、クラウド会計ソフトの導入はほぼ必須です。ただ、ソフトを選ぶ前に知っておきたい変更があります。青色申告特別控除の金額と要件が、令和9年分から変わります。この記事では、まず制度側の変更を確認したうえで、freee会計・マネーフォワード クラウド確定申告・弥生シリーズの3つを比較します。
令和9年分から、青色申告特別控除は最大75万円になる
令和8年度税制改正で、青色申告特別控除が見直されました。財務省の大綱には次のように書かれています。
55万円の青色申告特別控除について、その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うことを適用要件に加えた上、控除額を65万円に引き上げる。
65万円の青色申告特別控除について、対象者を上記の見直し後の要件を満たす者であって、その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳につき(略)電磁的記録の保存等を行っていることとの要件を満たすものとした上、控除額を75万円に引き上げる。
そして適用時期は、同じ大綱に「上記の改正は、令和9年分以後の所得税について適用する」と明記されています。所得税法等の一部を改正する法律は令和8年3月31日に成立・公布済みで、先の話ではありますが、すでに決まったことです。
整理すると、控除の階段がこう変わります。
| 要件 | 令和8年分まで | 令和9年分から |
|---|---|---|
| 複式簿記+貸借対照表の添付+期限内提出 | 55万円 | — |
| + e-Tax申告 または 電子帳簿保存 | 65万円 | — |
| 複式簿記+期限内提出+ e-Tax申告(必須) | — | 65万円 |
| + 優良な電子帳簿の保存 | — | 75万円 |
変わったのは金額だけではありません。これまで「e-Tax申告」と「電子帳簿保存」はどちらか一方を満たせばよい並列の関係でしたが、令和9年分からはe-Taxが必須になり、その上に電子帳簿保存が積み上がる形になります。紙で提出している人は、複式簿記で記帳していても65万円に届きません。
なお、国税庁のタックスアンサー「No.2072 青色申告特別控除」は、この記事を書いている2026年9月時点でまだ改正前の内容(令和7年4月1日現在法令等)です。75万円の記載も改正の予告もありません。制度の根拠を確認したい場合は、現時点では財務省の大綱を見ることになります。
簡易簿記のままだと、控除が受けられなくなる人がいる
今回の改正で見落とされやすいのが、10万円控除の側です。大綱には、10万円控除の対象者から除外される人が定められています。
10万円の青色申告特別控除の対象者から、その年において不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む者で、これらの所得に係る取引を簡易な簿記の方法により記録しているもののうち(略)その者が事業所得を生ずべき事業を営む者である場合 その年の前々年分の事業所得に係る収入金額が1,000万円を超えるもの
読み替えると、前々年の事業収入が1,000万円を超えていて、簡易簿記で記帳している場合、青色申告特別控除が0円になります。これまでは複式簿記でなくても10万円は受けられましたが、その受け皿がなくなります。
単価の高い案件を継続的に受けているフリーランスエンジニアにとって、年間の売上1,000万円は届かない数字ではありません。該当しそうなら、簡易簿記を続ける選択肢は実質的になくなります。複式簿記での記帳は、会計ソフトを使えば意識せずに満たせる部分なので、ここはソフト導入で解決できる話です。
65万円控除は「ソフトを入れれば取れる」ものではない
ここからは現行制度(令和8年分まで)の話ですが、改正後も考え方は変わりません。会計ソフトの宣伝で必ず出てくる青色申告特別控除65万円ですが、要件は2段構えになっています。
(2) 次のいずれかに該当していること。
イ その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存(下記<参考>参照)を行っていること(※注1)。
ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと(※注2)。
ここだけを見ると「e-Tax対応のソフトを使えばよい」と読めますが、これは55万円控除の要件を満たしていることが前提です。その55万円控除の要件が本体になります。
(1) 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書および所得の金額の計算に関する明細書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出すること。
この3つのうち、会計ソフトが助けてくれるのは複式簿記の記帳と、貸借対照表・損益計算書の作成までです。残る「確定申告期限までに提出する」は自分で守るしかありません。
期限を1日でも過ぎると、65万円控除は10万円控除になります。国税庁は10万円控除について「55万円の青色申告特別控除および65万円の青色申告特別控除の要件に該当しない青色申告者が受けられます」と書いています。ソフト代を何年分も上回る差が、提出日ひとつで生まれます。65万円控除の要件についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
もうひとつ、電子帳簿保存のルートを選ぶ場合には手続きが必要です。国税庁は65万円控除の要件について、こう説明しています。
優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付け及び保存を行い一定の事項を記載した届出書を提出すること
ソフトの機能をONにするだけでは足りず、税務署への届出が要ります。令和9年分からの75万円控除も「優良な電子帳簿」を要件にしているので、この手続きは引き続き関係してきます。
電子取引のデータは、保存が義務になっている
もうひとつ、ソフト選び以前の話があります。電子帳簿保存法により、電子データでやり取りした取引情報には保存義務があります。
また、取引に関する書類に通常記載される情報(取引情報)を含む電子データをやり取りした場合の、当該データに関する保存義務やその保存方法等についても同法により定められていますので、所得税法・法人税法上の保存義務者となる方は、特に「電子取引」についてご確認ください。
「所得税法上の保存義務者」には個人事業主も含まれます。クライアントからメールで届いた請求書PDF、サーバー会社から送られてくる領収書、クラウドサービスの明細。これらは紙に印刷して保管する対応では要件を満たしません。データのまま、決められた方法で保存する必要があります。
エンジニアの取引はほぼすべてがオンラインで完結するので、この義務の影響を最も受ける職種のひとつです。クラウド会計ソフトを使う理由は、記帳の効率化だけでなく、この保存要件に対応した仕組みが用意されている点にもあります。
freee会計の特徴
freeeは、スマホでの操作性やUIのわかりやすさに定評があり、e-Tax連携によってスマホだけで確定申告を完結させやすい点がよく評価されています。初めて会計ソフトを使う人にとって、直感的に操作できる設計になっています。
エンジニアにとって見逃せないのが、開発者向けサイトが公開されている点です。
freee APIで、外部サービスと連携したアプリを作成しよう
会計API、請求書API、工数管理APIなどが公開されており、それぞれにリファレンスが用意されています(Webhookがあるのは会計APIと人事労務API)。自分で作った案件管理ツールから請求データを流し込む、といった連携が視野に入ります。手作業の転記を減らしたい人には、比較の決め手になり得るポイントです。
スマホ完結・e-Tax対応
![]()
マネーフォワード クラウド確定申告の特徴
マネーフォワードは、連携できる銀行・クレジットカードの数の多さがよく挙げられる特徴です。複数の口座やカードを使い分けているフリーランスエンジニアにとって、明細の自動取り込みの幅広さはメリットになりやすいポイントです。
マネーフォワードにも開発者サイトがあり、クラウド会計API(勘定科目などのマスタ、仕訳、帳票データの取得・更新)とクラウド請求書API(請求書の作成・取得・更新、売上仕訳・消込仕訳の参照)のドキュメントが公開されています。API連携はfreeeだけの強みではないので、重視して選ぶ場合は各社の開発者サイトで対応範囲を直接ご確認ください。
銀行・カード連携数が豊富
![]()
弥生(やよいの青色申告 オンライン)の特徴
3つ目の選択肢が弥生です。フリーランス・個人事業主向けには「やよいの青色申告 オンライン」があり、料金は公式サイトで次のように案内されています。
| プラン | 初年度 | 次年度以降 |
|---|---|---|
| セルフプラン | 1年間無料 | 年額11,800円+税 |
| ベーシックプラン | 1年間無料 | 年額22,800円+税 |
| トータルプラン | 年額19,800円+税 | 年額39,600円+税 |
初年度無償キャンペーンは2027年3月15日までの申し込み分が対象で、適用には口座振替またはクレジットカードの登録が必要です。1事業者につき1回のみで、「やよいの白色申告 オンライン」で同じキャンペーンを使った場合は対象外になります。どのプランでも機能は同じで、違うのはサポートの範囲です。セルフプランはWebFAQのみ、ベーシックプランは電話・チャット・メールでの操作質問、トータルプランは仕訳や業務の相談まで含みます。
今回の改正との関係では、弥生は公式FAQで「2027年(令和9年)分から改正される青色申告特別控除75万円の要件のうち『優良な電子帳簿の作成・保存』に対応しています」と明記しています。
API連携については、弥生の会計ソフト本体に開発者向けの公開APIは確認できませんでした。ただし、弥生グループの請求書サービス「Misoca」はAPIを公開しており、OAuth 2.0による認証で請求書・見積書・納品書・品目・取引先などを扱えます。請求書の発行を自動化したい場合は、こちらが接点になります。
初年度無料・優良な電子帳簿に対応
![]()
「75万円に対応しているソフト」で選ぶ意味は薄い
改正が近づくと「75万円控除に対応」という宣伝が増えることが予想されます。ただ、この観点で3社を比べても差は出ませんでした。
- freee:2022年11月のプレスリリースで、全プランで優良電子帳簿機能の提供を開始したと発表
- マネーフォワード:サポートページで、仕訳履歴保存機能により優良電子帳簿の要件である訂正・削除履歴の確保を満たせると案内
- 弥生:公式FAQで、75万円控除の要件のうち「優良な電子帳簿の作成・保存」に対応と明記
3社とも対応しています。そして前述のとおり、優良な電子帳簿で控除を受けるには税務署への届出も必要です。75万円を取れるかどうかを分けるのは、ソフトの銘柄ではなく、e-Taxで期限内に提出したか、届出を出したか、という自分側の手続きです。ソフトはどれを選んでも土俵には乗れます。
選び方の目安
- 初めて会計ソフトを使う、スマホ中心で完結させたい → freee会計が向いている傾向
- 複数の銀行口座・カードを使っていて、明細の自動取り込みを重視したい → マネーフォワードが向いている傾向
- 初年度のコストを抑えたい、サポートの厚さを選びたい → 弥生(セルフ・ベーシックは初年度無料)
- 自作ツールと連携させたい、APIを触りたい → freeeとマネーフォワードはどちらも開発者サイトで会計API・請求書APIのドキュメントを公開。Webhookまで使うならfreee(会計API・人事労務API)。請求書に限れば弥生グループのMisocaにもAPIがある
料金プランはいずれも改定されることがあるため、最新の金額・機能は必ず公式サイトでご確認ください。どのソフトも無料お試し期間が用意されているので、実際に触ってみてから決めるのが確実です。
どれを選んでも、控除額を分けるのは期限内にe-Taxで提出できるかどうかです。ソフトの機能差より、こちらのほうが金額へのインパクトは大きくなります。
まとめ
- 令和8年度税制改正で青色申告特別控除が見直され、令和9年分から最大75万円になる。改正法は令和8年3月31日に成立・公布済み
- e-Taxは「電子帳簿保存とどちらか一方」から必須要件に変わる。紙で提出していると65万円に届かない
- 前々年の事業収入が1,000万円超で簡易簿記だと、10万円控除の対象からも外れる(控除0円)
- 国税庁のタックスアンサーは2026年9月時点でまだ改正前の内容。根拠は財務省の大綱で確認できる
- 優良な電子帳簿で控除を受けるには、ソフトの機能に加えて税務署への届出が必要
- freee・マネーフォワード・弥生はいずれも優良電子帳簿に対応しているため、「75万円対応」はソフト選びの決め手にならない
- freeeとマネーフォワードは開発者向けサイトでAPIリファレンスを公開(Webhookはfreeeの会計API・人事労務API)。マネーフォワードは銀行・カード連携の幅広さ。弥生は初年度無料(2027年3月15日まで)
この記事で参照した一次情報
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日 閣議決定)(55万円控除にe-Tax要件を加えて65万円へ、65万円控除に電磁的記録の保存要件を加えて75万円へ引き上げること、令和9年分以後の所得税について適用すること、簡易な簿記で前々年分の事業所得の収入金額が1,000万円を超える者を10万円控除の対象から除外することを確認)
- 財務省 第221回国会提出法律案(所得税法等の一部を改正する法律が令和8年3月31日に成立・公布されたことを確認)
- 国税庁 No.2072 青色申告特別控除(現行の65万円控除がe-Tax申告または電子帳簿保存を要件とすること、その前提として55万円控除の要件が必要であることを確認。2026年9月時点で令和7年4月1日現在法令等にもとづく内容であることも確認)
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー 65万円の青色申告特別控除の適用要件(優良な電子帳簿による場合は届出書の提出が必要であることを確認)
- 国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト(電子データでやり取りした取引情報に保存義務があり、所得税法上の保存義務者が対象であることを確認)
- freee Developers Community(会計API・請求書API・工数管理API等が公開され、各APIにリファレンス、会計API・人事労務APIにWebhookが用意されていることを確認)
- マネーフォワード クラウド 開発者サイト(クラウド会計API・クラウド請求書API等のドキュメントが公開されていることを確認)
- 弥生 やよいの青色申告 オンライン 料金プラン(3プランの金額、初年度無償キャンペーンの対象期間と適用条件、75万円控除の要件のうち優良な電子帳簿に対応していることを確認)
- Misoca API ドキュメント(OAuth 2.0による認証で請求書・見積書・納品書等のAPIが提供されていることを確認)
本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。参照した国税庁のタックスアンサーは令和7年4月1日現在の法令等にもとづくもので、令和9年分からの改正は反映されていません。料金・機能・キャンペーンは変更されることがあるため、最新情報は各社公式サイトでご確認ください。

