フリーランスエンジニアの年収中央値|公的調査では300〜400万円の帯、平均840万円と違う理由

木の机の上で手帳に書き込む手元と、そばに置かれたコーヒーとクロワッサン 単価・契約
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。

「フリーランスエンジニアの平均年収は840万円」という数字を見て、自分の売上と見比べて手が止まったことがあります。平均は高い人に引っ張られるので、本当に知りたいのは真ん中の人、つまり中央値でした。

ところが探しても、フリーランスエンジニアの年収の中央値を公表している一次資料は見つかりませんでした。代わりに、公的な調査が年収の分布を公表しています。分布があれば、真ん中の人がどの帯にいるかは読めます。読んでみると、平均840万円の半分に届かない帯が出てきました。

先に結論

  • 中央値そのものを公表した一次資料は、調べた範囲では見つかりませんでした。内閣官房の実態調査と国税庁の統計はいずれも分布か平均です
  • 内閣官房の令和4年度調査(全職種・所得ベース)では、真ん中の人は300万円以上400万円未満の帯にいます
  • エージェントが公表する平均840万円・906万円は、母集団と時点が違い、平均であって中央値ではありません
  • 会社員(1年を通じて勤務した給与所得者)は平均478万円で、真ん中の人は400万円超500万円以下の帯です(令和6年分)。ただしこれは給与収入で、フリーランスの所得とは段階が違います

中央値を公表している一次資料はなかった

「フリーランスエンジニア 年収 中央値」で検索すると、中央値を断定している記事が出てきます。ところが根拠を辿ると、エージェント各社の自社データか、出典のない数字でした。

一次資料として確認できたのは次の2つで、どれも中央値は載せていません。

資料 載っているもの 母集団
内閣官房ほか「令和4年度フリーランス実態調査結果」 収入の分布(11区分) 全職種のフリーランス 2,119名。調査時期は令和4年8月
国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」 平均給与と給与階級別の分布 民間の給与所得者。フリーランスは含まない

分布があれば、累計が50%を超える帯が「真ん中の人がいる帯」です。以下ではその帯を読んでいきます。

内閣官房の調査:所得ベースで300〜400万円の帯

内閣官房・公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁が令和4年8月に行った調査です。回答者2,119名のうち、フリーランスとしての直近1年間の収入は次の分布でした。

直近1年間の収入 割合 累計
100万円未満 14.1% 14.1%
100〜200万円未満 12.6% 26.7%
200〜300万円未満 12.7% 39.4%
300〜400万円未満 12.6% 52.0%
400〜500万円未満 9.5% 61.5%
500〜600万円未満 6.9% 68.4%
600万円以上(5区分の合計) 15.0% 83.4%
わからない・答えたくない 16.4% —

累計が50%を超えるのは300〜400万円未満の帯です。「わからない・答えたくない」16.4%を除いて答えた人1,772名だけで数え直しても、300万円未満までで47.2%、400万円未満までで62.3%なので、帯は変わりません。

この調査で見落とせないのは、収入の定義です。設問の注記に、売上高ではなく、売上高から必要な経費等を差し引いた所得の額で、社会保険料と税を差し引く前の額と書かれています。つまりこの300〜400万円は、経費を引いたあとの数字です。

もう1つ、回答者の属性です。50代が37.5%、60代が31.6%で、40代以下は19%にとどまります。職業は「情報処理・通信技術者」が9.0%で、全体はエンジニアの調査ではありません。エンジニアだけの分布は載っていないため、この帯はフリーランス全体の話として読むことになります。

「平均840万円」の分母は誰か

エージェントの公式サイトにある年収の数字は、注記を読むと分母が分かります。

数字 公式サイトの注記 読み方
Midworks 平均年収840万円以上 2022年5月中の参画決定案件で12ヶ月稼働した場合。週3、4の案件は週5換算にて集計 その月に案件が決まった人の契約単価を12か月分にした値。週3・4日の案件も週5日分に換算。時点は2022年
ギークスジョブ 平均年収906万円以上 ギークスジョブ経由で関東エリアの案件にご参画いただいている方の平均の月報酬額(税込)を基に、12ヶ月稼動したケースを想定して算出しております。(2026年3月時点) 関東エリアの参画者の月報酬×12。時点は2026年
クラウドワークス テック 利用者平均年収846万円 2026年2〜4月実績(成約したエンジニア案件のうち週5稼働の場合) 成約した週5案件の参画者の値。時点は2026年

Midworksの840万円は、案件が決まった人の契約単価を12か月分にした値です。案件が決まらなかった人や、途中で契約が切れた人は分母に入りません。さらに、週3日・週4日の案件は週5日に換算して集計されているので、稼働日数が少ない人の分も週5日分に引き上げた値になっています。契約単価×12は売上に近い額で、経費と社会保険料を引く前です。

公的調査の300〜400万円が「経費を引いたあとの所得」で「全職種の回答者」であるのに対し、840万円は「経費を引く前の契約額」で「案件が決まったエンジニア」です。同じ「年収」でも、測っている段階と分母が両方違います。差が出るのは当然で、どちらかが間違っているという話ではありませんでした。

そして840万円も906万円も平均です。分布が右に長い(一部に高い人がいる)とき、平均は中央値より上に出ることが多くなります。確認した公式ページには中央値の記載がなく、参画者の真ん中の人がいくらかは分かりません。

会社員の478万円は「給与収入」

比較対象としてよく出る会社員の数字も確認しました。国税庁の令和6年分 民間給与実態統計調査では、1年を通じて勤務した給与所得者5,137万人の平均給与は478万円(男性587万円、女性333万円、正社員545万円)です。

給与階級別の分布は300万円超400万円以下が16.1%で最多、次いで400万円超500万円以下が15.3%です。男女計の人数を階級ごとに足して累計すると、400万円以下までで48.0%、500万円以下までで63.3%なので、真ん中の人は400万円超500万円以下の帯にいます。

ただし、この統計の「給与」は給与所得控除前の支給総額です。会社員は経費を引く段階がなく、健康保険と厚生年金の保険料は会社が半分負担します。フリーランスの所得と並べるには、売上から経費を引き、さらに国民年金・国民健康保険を全額自分で払う段階まで揃えることになります。この積み上げは単価50万円の手取りの記事でやっていて、年商600万円で手元に残るのは約367万円でした。

3つの数字を同じ表に置くと

数字 何の額か 母集団と時点
300〜400万円の帯(中央値の帯) 経費を引いた所得。税・社保を引く前 全職種のフリーランス2,119名。令和4年8月
平均840万円 契約単価×12か月。経費を引く前 2022年5月に案件が決まったMidworks参画者
平均478万円/400〜500万円の帯 給与の支給総額。控除前 民間の給与所得者5,137万人。令和6年分

こうして並べると、「フリーランスエンジニアの年収中央値は〇〇万円」と1つの数字で言い切れる資料は存在しないことが分かります。言えるのは、どの資料の、どの段階の、どの帯か、までです。

実務としてどう使うか

1. 自分の数字を同じ段階に置く

自分の位置を知りたいなら、比べる相手の段階に合わせて自分の数字を出すことになります。契約単価×12なら840万円と、そこから経費を引いた所得なら300〜400万円の帯と、さらに社会保険料と税を引いた手取りなら会社員の手取りと並びます。段階を揃えずに比べると、高くも低くも見えます。

2. 平均より提示額を見る

平均840万円は、自分に提示される額ではありません。提示額はスキルと案件の領域と企業側の予算で決まり、同じスキルでもエージェントによって変わります。中央値を探すより、自分への提示額を2社以上並べるほうが、自分の相場は正確に分かります。

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もう1社並べる相手としては、クラウドワークス テックがあります。IT・エンジニア特化のエージェント・求人紹介サービスで、利用者の90%がリモートワーク案件で稼働しています(2025年1月末時点)。登録は無料です。

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3. 帯が出たら手取りまで下ろす

提示額が出たら、そこから手取りまで下ろします。年商600万円の積み上げは単価50万円の手取りの記事に、エージェントごとの数字の読み方はエージェント6社比較の記事にまとめています。

まとめ

  • フリーランスエンジニアの年収中央値を公表した一次資料は見つからなかった。あるのは分布と平均
  • 内閣官房の令和4年度調査(全職種・経費を引いた所得)では、真ん中の人は300〜400万円未満の帯
  • Midworksの平均840万円は2022年5月に案件が決まった人の契約単価×12か月。経費を引く前で、平均であって中央値ではない
  • 会社員は平均478万円、真ん中は400万円超500万円以下の帯(令和6年分)。ただし給与収入なので、フリーランスの所得と並べるには段階を揃える
  • 自分の相場は、中央値を探すより2社以上の提示額を並べるほうが正確に出る

あわせてどうぞ

売上から手取りまでの積み上げは単価50万円の手取りの記事に、単価相場の数字がどこから来ているかは単価相場の記事にまとめています。

この記事で参照した一次情報

本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。「中央値の帯」は各資料の分布から累計が50%を超える区分を読んだもので、資料自体が中央値を公表しているわけではありません。調査ごとに母集団・時点・収入の定義が異なるため、帯同士を直接比較することはできません。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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