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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
家賃の事業割合を決めたあと、次に手が止まるのが「帳簿にどう載せるか」です。「毎月、按分した金額で仕訳を切る」と書く解説と、「年末にまとめて家事分を引く」と書く解説があり、freee やマネーフォワードの家事按分機能は後者の形で動きます。どちらが正しいのかを、国税庁の記帳の手引きと所得税法施行規則で確かめました。
この記事では、家事按分の記帳方法が2通りとも認められていることと、その優先順位、年末に1本で済ませる仕訳の形、freee・マネーフォワードの家事按分機能が何を自動化しているかを整理します。割合そのもの(50%ルールの誤解)は家事按分の50%ルールの記事で書いたので、この記事は「割合が決まった後の帳簿」に絞ります。
先に結論
- 記帳の原則は支払の都度、家事分を除いて記録することです。ただし、青色申告者について所得税法施行規則57条2項は「そのつど区分整理し難いものは年末において、一括して区分整理することができる」と定め、国税庁の「帳簿の記帳のしかた」も、年末に一括して家事分を減算する記載例を載せています。年末1本の仕訳は、条文上はただし書ですが、国税庁の手引きが記載例で示している形です
- 年末の仕訳は「事業主貸 / 地代家賃」の1本で、家事分を経費の勘定科目から事業主貸へ振り替えます。freee の「家事按分」機能もマネーフォワードの「家事按分」画面も、この振替仕訳を事業利用比率から自動で作ります。どちらも年1回、全部の取引を登録した後に実行する前提の機能です
- 決算書に家事按分の専用欄はなく、按分後の金額を各経費欄に書くだけです(青色申告決算書の書き方「決算整理後の金額を記入します」)。青色申告者は帳簿と決算書類、現金・預金の出し入れに関する領収書などが7年、それ以外の書類は5年保存です。白色申告者は法定の帳簿が7年、その他の帳簿と書類は5年です(施行規則63条・102条)。按分の根拠にした面積や稼働時間のメモは、書類と一緒に残す形になります
記帳方法は2通り。原則は都度、年末一括も国税庁が認めている
国税庁が配っている「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」(令和8年5月版)は、経費帳の説明でこう書いています。
家事上の経費に関連する経費(家事関連費)については、家事上の経費を除いて記載するのが原則ですが、その使用状況に基づき年末に一括して家事上の経費(減算)を、次の記載例のように記載することもできます。
出典:国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」(PDF)15ページ(2026年9月11日時点)
この記載例は、12月31日の行に「水道料金の家事分除外(60,000円×70%)家事分 △42,000」「電気料金の家事分除外(140,000円×70%)家事分 △98,000」と書く形です。年の途中は総額のまま記帳し、年末に家事分をマイナスで1行足しています。国税庁の例で除外しているのは家事分70%、つまり事業分は30%で、50%を下回る割合がそのまま載っています。
青色申告者には、所得税法施行規則57条2項に同じ趣旨の定めがあります。「必要経費に算入されない収入又は支出を含むものについては、そのつどその…必要経費に算入されない部分の金額を除いて記録しなければならない。ただし、そのつど区分整理し難いものは年末において、一括して区分整理することができる」という条文です。原則は都度、例外として年末一括、という順序がここで決まっています。
| 方法 | 帳簿の載り方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 都度按分 | 支払のたびに事業分だけを経費に記帳(通信費1万円・事業50%なら通信費5,000円+事業主貸5,000円) | 施行規則57条2項本文、記帳のしかた「家事上の経費を除いて記載するのが原則」、マネーフォワード仕訳ガイドの例 |
| 年末一括 | 年内は総額で記帳し、12月31日に家事分を減算(事業主貸へ振替) | 施行規則57条2項ただし書、記帳のしかた15ページの記載例 |
| 会計ソフトの家事按分機能 | 総額で取引を登録し、決算時に事業利用比率から振替仕訳を自動作成 | freee ヘルプ「家事按分を登録する」、マネーフォワード「家事按分」の使い方 |
出典:所得税法施行規則57条、国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」、freee ヘルプセンター、マネーフォワード クラウド確定申告サポート(いずれも2026年9月11日時点)
どちらの方法でも、決算書に載る経費の額は同じです。違うのは手間と、按分の根拠が帳簿のどこに残るかで、年末一括なら「総額」と「除外した家事分」が別々の行に残るので、後から割合を説明しやすくなります。なお、「帳簿の記帳のしかた」と決算書の書き方にあるのは簡易帳簿の経費帳に△で減算する例で、「事業主貸」を使った複式の仕訳例は載っていません。複式簿記で同じ処理をすると、次の節の事業主貸への振替になります。
年末に切る仕訳は1本。家事分を「事業主貸」へ振り替える
複式簿記で書くと、家賃を毎月10万円、事業用口座から払っていて事業割合が50%の場合、仕訳はこうなります。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 毎月の支払(事業用口座) | 地代家賃 100,000 | 普通預金 100,000 |
| 毎月の支払(個人の口座・カード) | 地代家賃 100,000 | 事業主借 100,000 |
| 12月31日の按分(年額120万円×家事分50%) | 事業主貸 600,000 | 地代家賃 600,000 |
| 都度按分する場合の支払 | 地代家賃 50,000 / 事業主貸 50,000 | 普通預金 100,000 |
出典:freee ヘルプセンター「家事按分を登録する」、マネーフォワード「『家事按分』の使い方」「家事按分の仕訳」の例をもとに作成(2026年9月11日時点)
事業主貸は、青色申告決算書の書き方によると「生活費その他の家事上の費用や所得税等、住民税など事業所得の必要経費にならない租税公課、商品などの家事消費の金額など本年中に事業から支出した金額の合計額」を書く欄で、経費ではなく貸借対照表の資産の部に載ります。年末の1本で家事分60万円が地代家賃から抜け、損益計算書の地代家賃は60万円になります。個人の口座やカードで払っている場合は支払時に事業主借で受けるので、freee のヘルプが書いているとおり、按分後は事業主借と事業主貸が両建てになります。所得には影響しないので、そのままでも差し支えないというのが freee の説明です。
青色申告決算書にも収支内訳書にも家事按分の専用欄はなく、経費欄には「経費帳の各科目の口座から、決算整理後の金額を記入します」(青色申告決算書の書き方)。例外が「地代家賃の内訳」で、「本年中の賃借料」に年間の支払額、「左の賃借料のうち必要経費算入額」に按分後の額を分けて書き、freee のヘルプによると後者の合計が損益計算書の地代家賃と一致するようにします。総額と按分後の両方を書く欄が様式にある、というのが、年末一括で「総額」を帳簿に残しておく実務上の理由です。
freee とマネーフォワードの家事按分機能は「年末一括」を自動化している
freee の「家事按分」機能は、勘定科目・品目・事業利用比率のルールを登録しておくと、確定申告時に[再計算]で按分し、「登録した事業利用比率分が経費となり、残りが自動で『事業主貸』に振替えられます」と説明されています(freee ヘルプ「家事按分を登録する」、2026年8月20日更新)。取引は「事業利用分とプライベート利用分の総額で支出を登録」し、按分前は過大に経費が入った状態でよい、と書かれています。個人事業主向けの機能で、法人では使えません。確定申告書類の作成画面で「仕事とプライベートで兼用しているものはありますか?」を「いいえ」にすると、設定済みのルールがすべて削除される、という作りです。
マネーフォワード クラウド確定申告の「家事按分」画面は、勘定科目・補助科目ごとに事業利用比率(0.01〜99.99%)を登録し、「仕訳登録済の経費合計額 × 事業利用比率」で経費対象の金額を計算して、残りを「事業主貸」で仕訳にします(「家事按分」の使い方、2024年12月3日更新)。「本機能を使用した家事按分の仕訳は、仕訳をすべて登録したタイミングで年に1回作成する想定です」「家事按分後の仕訳を毎月ご自身で計算して登録している場合、本機能を使用する必要はありません」とあり、都度按分している人は使わなくてよい設計です。消費税申告の計算方法を「積上げ」にしていると使えない、という制限もヘルプに書かれています。
どちらも同じ思想で、年内は総額で記帳、年末に比率で振替です。国税庁の記載例と同じ形なので、ソフトの機能をそのまま使えば、施行規則57条2項ただし書の「年末において、一括して区分整理」の形になります。
パソコンなどの固定資産は、経費帳ではなく固定資産台帳で按分する
家賃や通信費と違い、パソコンや机のような減価償却資産は、経費帳の按分ではなく固定資産台帳の「事業専用割合」で処理します。「帳簿の記帳のしかた」の固定資産台帳の記載例には「事業専用割合」と「必要経費算入額」の欄があり、店舗兼住宅の例で償却額368,000円に割合40%を掛けて147,200円を必要経費にしています。freee の固定資産台帳でも、プライベートと兼用する資産は「経費割合」を100%未満に設定する形です(freee ヘルプ「固定資産をローンで購入した場合の記帳方法」)。30万円未満の資産を一括で経費にする特例と金額の線引きは、少額減価償却資産の記事にまとめています。
帳簿は7年、書類は5年。按分の根拠も書類として残す
青色申告者の帳簿と決算書類、現金や預金の出し入れに際して作った領収書などの書類は起算日から7年、それ以外の書類(請求書・契約書など)は5年保存です(所得税法施行規則63条)。白色申告者も所得税法232条で帳簿の備付けと保存が義務になっていて、法定の帳簿は7年、その他の帳簿と書類は5年です(施行規則102条4項)。起算日は、帳簿なら閉鎖の日の属する年の翌年3月15日の翌日です。
按分の根拠にした間取り図の面積や稼働時間の記録は、法令で保存を義務づけられた書類そのものではありませんが、年末の減算行「×70%」の説明材料なので、その年の書類と同じ場所に置いておく形になります。インボイス登録をして課税事業者になっている人は、消費税側でも家事使用分は課税仕入れに当たらず、水道光熱費などで課税仕入れになるのは所得税の施行令96条で必要経費になる部分に限られます(消費税法基本通達11-1-4・11-1-5)。所得税の按分比率と消費税の課税仕入れの比率は同じ基準で、マネーフォワードの家事按分仕訳が「事業主貸は対象外、貸方の通信費は課税仕入れ10%」と税区分を分けているのはこの処理です。簡易課税や2割特例を選んでいる人は、仕入税額控除を売上の消費税額から計算するので、この判定は出てきません。
実務としてどうするか
1. 割合は年初に決めて、年内は総額で記帳する
事業割合は面積や稼働時間から決め、途中で変えない形になります。年内は家賃・電気代・通信費を総額のまま記帳し、家事按分の対象にする取引には freee なら品目、マネーフォワードなら勘定科目か補助科目で印をつけておきます。総額で記帳しておくと、決算書の内訳欄に「本年中の賃借料」を書くときに集計し直さずに済みます。
2. 年末に按分の仕訳を1本切り、決算書の内訳欄に総額と按分後を書く
12月31日付で「事業主貸 / 地代家賃」の振替を入れ、損益計算書の経費が按分後の額になっていることを確かめます。青色申告決算書の「地代家賃の内訳」には、本年中の賃借料と必要経費算入額を分けて書きます。手書きや Excel で帳簿をつけている人も、国税庁の記載例のとおり「家事分除外(金額×割合)」の減算行を12月31日に足せば同じ形です。
3. 会計ソフトの家事按分機能に任せる
比率を登録して年末に[再計算]か[仕訳登録]を押すだけで、事業主貸への振替仕訳が作られます。freee では、青色申告決算書の「地代家賃の内訳」も、確定申告書類の作成画面の質問に答える形で決算書に反映されます。
家事按分は品目とルールを登録して再計算するだけ
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勘定科目・補助科目ごとに比率を設定できる
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まとめ
- 家事按分の記帳は都度が原則、年末一括も可(施行規則57条2項ただし書、国税庁「帳簿の記帳のしかた」15ページの記載例)
- 年末の仕訳は「事業主貸 / 地代家賃」の1本。個人の口座で払った分は支払時に事業主借で受け、按分後は両建てのままで差し支えない
- freee・マネーフォワードの家事按分機能は年1回、総額から比率で振り替える設計。国税庁の記載例と同じ形
- パソコンなどの固定資産は固定資産台帳の事業専用割合で按分する
- 青色は帳簿・決算書類・現金預金の取引書類が7年、その他の書類は5年保存。白色は法定帳簿7年・その他5年。按分の根拠資料も同じ場所に残す
あわせてどうぞ
割合の決め方と「50%を超えないと按分できない」という誤解は家事按分の50%ルールの記事に、経費になるものの一覧は経費チェックリストの記事に、freee・マネーフォワード・弥生の違いは会計ソフト比較の記事にまとめています。
この記事で参照した一次情報
- 国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」(PDF)(15ページ「家事上の経費を除いて記載するのが原則ですが…年末に一括して家事上の経費(減算)を…記載することもできます」と経費帳の記載例、固定資産台帳の「事業専用割合」「必要経費算入額」欄を確認)・同「令和7年分 白色申告者の決算の手引き(一般用)」(PDF)(「18 家事上の費用」の「使用面積や保険金額、点灯時間などの適切な基準によってあん分して計算します」を確認)・同「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」
- 国税庁「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」(PDF)(経費欄は「経費帳の各科目の口座から、決算整理後の金額を記入します」、事業主貸は「本年中に事業から支出した金額の合計額」、家事按分の専用欄がないことを確認)・同「令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方」(PDF)(家事上の費用は「これらの金額を除外します」を確認)
- 所得税法施行規則(昭和40年大蔵省令第11号)(第57条2項の「そのつど…除いて記録」と「年末において、一括して区分整理することができる」、第63条の帳簿・決算書類・現金預金取引等関係書類7年とその他の書類5年、第102条4項の白色申告者の保存期間を確認)・所得税法(昭和40年法律第33号)(第232条の帳簿の備付け・保存義務、第148条の青色申告者の帳簿書類を確認)
- 国税庁 消費税法基本通達 11-1-4(家事共用資産の取得)・11-1-5(水道光熱費等の取扱い)(家事使用部分は課税仕入れに該当せず、合理的な基準で計算することを確認)
- freee ヘルプセンター「家事按分を登録する」(2026年8月20日更新。品目・ルールの登録、総額での取引登録、再計算で事業主貸へ振替、個人事業主向け機能、プライベート資金の仕訳例を確認)・同「事務所などの家賃を記入する(地代家賃の内訳)」(「本年中の賃借料」「左の賃借料のうち必要経費算入額」と損益計算書の一致を確認)・同「freee会計で行う確定申告の流れ」(家事按分の質問を「いいえ」にするとルールが削除されることを確認)・同「固定資産をローンで購入した場合の記帳方法」(固定資産台帳の「経費割合」を100%未満に設定する例を確認)
- マネーフォワード クラウド確定申告サポート「『家事按分』の使い方」(2024年12月3日更新。事業利用比率0.01〜99.99%、経費対象外の金額を事業主貸で仕訳、年1回作成の想定、積上げ計算では利用不可を確認)・同 仕訳ガイド「家事按分の仕訳」(2025年8月4日更新。都度按分の仕訳例「通信費5,000+事業主貸5,000/普通預金10,000」を確認)
本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。会計ソフトの画面や機能は変わることがあります。最新の情報および個別の判断は、国税庁のページ、各ソフトのヘルプ、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

