開業届に必要なものは正本・マイナンバー・本人確認書類の3つ|印鑑と収受印はもう不要。屋号は法令の記載事項にない

ノートパソコンの横に置かれたペンと、手書きのチェックリストが書かれた紙 確定申告・税金
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

「開業届 個人事業主 必要なもの」で検索すると、印鑑・身分証のコピー・控え2部・屋号を決めておく、といった持ち物リストが並びます。ところが国税庁の様式と記載要領を読むと、そのうちいくつかは要らないもので、逆に載っていない「もう1枚の届出」があります。

この記事では、国税庁の様式(様式ID NTA1KOZ060010040)と記載要領、所得税法施行規則98条を突き合わせて、書面で出すときに本当に要るものと、様式の欄で手が止まる4か所(屋号・職業・事業の概要・納税地の区分)を確定させます。提出期限は開業届の期限の記事、e-Tax で出す場合の入口と控えは開業届の e-Tax の記事で書いたので、この記事は「書面で出すなら何を持って、どこへ行くか」に絞ります。

先に結論

  • 書面で出すときに要るのは届出書の正本1枚、マイナンバー(12桁)、本人確認書類の3つです。印鑑は2021年4月1日から要りません(国税庁「税務署窓口における押印の取扱いについて」)。控えは2025年1月から収受日付印を押してもらえないので、正本だけ出し、控えは自分で作ります
  • 屋号と職業は、法令が定める記載事項に入っていません。所得税法施行規則98条が求めているのは氏名・住所・個人番号・納税地、開業の旨と年月日、事業の概要、事務所等の所在地の4つ+その他参考事項で、記載要領にも屋号の書き方の定めはありません。記載を求める定めがなく法定の記載事項でもないので、屋号がない人はその欄を空欄で出す形になります。個人事業税の判定に効くのは職業欄の言葉ではなく事業の実態です(地方税法72条の2)
  • 出す先は納税地(原則は住所地)を所轄する税務署で、窓口に行かなくても郵送で出せます。国税の開業届とは別に、都道府県税事務所への「事業開始等申告書」があり、東京都は事業開始から15日以内です。二次情報のリストに載りにくいのはこちらです

要るものは3つ。印鑑と控えの収受印はもう要らない

国税庁の記載要領(個人事業の開業・廃業等届出書の書き方)は、提出時に要るものを1行で書いています。

※ 届出書を提出する際には、①個人番号(12 桁)の記載及び②届出をする方の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となります。
なお、届出書の控えを保管する場合においては、その控えには個人番号を記載しない(複写により控えを作成し保管する場合は、個人番号部分が複写されない措置を講ずる)など、個人番号の取扱いには十分ご注意ください。

出典:国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書 書き方」(PDF)(2026年9月11日時点)

持ち物リストによく載るものを、国税庁のページと突き合わせると次のようになります。

よく載るもの 要るか 根拠
届出書の正本 要る(1枚) 収受日付印ページ「申告書等の正本(提出用)のみを提出(送付)」
マイナンバー 要る(届出書に12桁を記載) 記載要領※、番号制度のお願い「”毎回”記載が必要」
本人確認書類 要る(提示または写しの添付) マイナンバーカード1枚、または通知カード等+運転免許証等(番号法令の本人確認書類)
印鑑 要らない 2021年4月1日以降、押印不要(押印の取扱いページ)
控え(収受印用) 提出には要らない 2025年1月から収受日付印なし。希望者に日付・税務署名入りリーフレット
屋号・事務所の契約書 要らない 施行規則98条の記載事項にない。添付書類の定めもない

出典:国税庁「番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い」「番号法令、国税庁告示における主な本人確認書類等」「税務署窓口における押印の取扱いについて」「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」、所得税法施行規則98条(いずれも2026年9月11日時点)

本人確認書類は「番号確認」と「身元確認」の2つに分かれます。マイナンバーカードなら1枚で両方を満たし、持っていない人は通知カード(記載の氏名・住所が住民票と一致している場合に限る)か個人番号付きの住民票の写しで番号を、運転免許証やパスポートで身元を確認します。郵送なら、これらの写しを「本人確認書類(写)添付台紙」に貼って同封します。押印は、様式に押印欄が残っていても不要で、任意で押しても効力に影響はないと国税庁が書いています。

控えは、自分で1部コピーして持っていき、窓口で日付と税務署名の入ったリーフレットをもらうか、郵送なら切手を貼った返信用封筒を同封します。コピーで控えを作るときは、記載要領のとおりマイナンバーの欄が写らないようにします。控えの使い道(雇用保険の特例申請、屋号付き口座)と e-Tax の受信通知は、開業届の e-Tax の記事に書きました。

様式で手が止まる4か所。屋号と職業は法令の記載事項にない

様式の欄は多いのですが、法令が「書きなさい」と定めている項目は限られています。所得税法229条を受けた施行規則98条の条文です。

一 その届出書を提出する者の氏名、住所(国内に住所がない場合には、居所)及び個人番号(中略)並びに住所地(国内に住所がない場合には、居所地)と納税地とが異なる場合には、その納税地
二 国内において新たに事業所得等を生ずべき事業を開始し、又はその事業所得等を生ずべき事業に係る事務所等を設け、若しくはその事務所等を移転し、若しくは廃止した旨及びその開始し、又はその事務所等を設け、若しくはその事務所等を移転し、若しくは廃止した年月日
三 国内において新たに事業所得等を生ずべき事業を開始した場合にはその事業所得等を生ずべき事業の概要
四 その事務所等の所在地(事務所等を移転した場合には、その移転後の事務所等の所在地)
五 その他参考となるべき事項

出典:所得税法施行規則 第98条

屋号も職業も、この5つの中にありません。様式には「屋号」「職業」の欄がありますが、法令上の必須項目は氏名・住所・個人番号・納税地、開業した旨と開業日、事業の概要、事務所等の所在地です。手が止まりやすい4か所を順に見ます。

欄 書き方 根拠・注意
屋号 なければ空欄で出す形 施行規則98条の記載事項になく、記載要領にも定めがない。作成コーナーの説明では「個人事業者の方が使用する商業上の名」
職業 実態をそのまま(例:ソフトウェア開発) 記載事項にない。個人事業税の業種判定は実態で決まり(地方税法72条の2)、職業欄の言葉で税額が決まるわけではない
事業の概要 「できるだけ具体的に」(様式の注記) 98条3号の必須項目。誰に何を提供するかを1〜2文で
納税地の区分 「5. 住所地」を記入 納税地は原則住所地(所得税法15条、No.2029)。事務所所在地にする特例は申告書で変更

出典:国税庁 様式 NTA1KOZ060010040、確定申告書等作成コーナーよくある質問「屋号・雅号の入力について」、タックスアンサー No.2029、所得税法施行規則98条(2026年9月11日時点)

屋号は、あとから決めても困りません。確定申告書にも屋号の欄がありますが、そちらも作成コーナーの説明は屋号の定義と「商店名等を入力」だけで、決まっていなければ空欄で出す形になります。屋号付きの口座を作りたくなった時点で、次の確定申告書に書けば足ります。

職業欄は、エンジニアがいちばん迷う欄です。何を書くかを定めた条文はなく、確定申告書の職業欄についても同じことを確定申告書の職業欄の記事で確かめました。効いてくるのは個人事業税の業種判定で、都道府県は申告書の記載と事業の実態を見ます。地方税法が列挙する法定業種に「ソフトウェア業」はなく、分かれ目は請負業に当たるかどうかで、その論点は個人事業税の記事にあります。開業届の職業欄は、実態をそのまま書き、確定申告書と揃える、の2つになります。

そのほかの欄は迷う余地が少ないものです。届出の区分は「開業」に1、所得の種類は「事業(農業)所得」にチェック、開業・廃業等日は事業を始めた日、「青色申告承認申請書」の有無は同時に出すなら「有」、消費税の届出は開業時から課税事業者を選ぶ人だけ「有」、給与等の支払の状況は1人で始めるなら空欄です。

どこに出すか。納税地の税務署と、国税ではないもう1枚

提出先は「納税地を所轄する税務署長」です。納税地は原則として住所地で、国税庁のタックスアンサー No.2029 は「一般的には住所地になります」「住所とは、生活の本拠のことです」と書いています。自宅の住所で国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」を郵便番号か住所から引くと、所轄の税務署が出ます。事務所を借りていて、その所在地が納税地と違っても、出す先は納税地の税務署1か所です(A1-5 の備考「納税地を所轄する税務署長以外の税務署長への提出は不要です」)。

納税地は原則として住所地なので、開業届に書く住所は自宅になるのが普通です。一方で、請求書や名刺、サイトに載せる事業用の住所を自宅と分けたい場合は、バーチャルオフィスの住所を借りる方法があります。自宅住所を納税地にしたまま、外に出す住所だけを分ける使い方です。GMOオフィスサポートは住所の利用だけなら月額660円から、郵便物の受け取りと転送を含むプランは月額1,650円からで、入会金と保証料はかかりません(郵便物の転送料は別。2026年9月24日に公式サイトで確認)。

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窓口に持っていく場合、2026年10月1日から税務署の総合窓口の受付時間は原則9時から15時です(受付時間外でも、開庁時間の8時30分から17時までなら手続はできます)。土・日・祝日と年末年始は執務を行っていません。窓口に行く必要はなく、郵送なら正本と、添付台紙に貼った本人確認書類の写しの2点で済みます。日付入りのリーフレットが要る人だけ、切手を貼った返信用封筒を足します。

見落としやすいのが、国税とは別の届出です。個人事業税は都道府県の税金で、東京都は「都内において、個人で事業を開始した場合、事業開始(廃止)等申告書(個人事業税)により、申告してください」「事業の開始の日から15日以内に申告をお願いします」としています(東京都主税局「事業を始めたとき・廃止したとき」、2025年5月9日更新)。提出先は所管の都税事務所で、オンラインの申請フォームもあります。大阪府は「事業開始・変更・廃止申告書」を開業した日から2か月以内、神奈川県は「個人事業開業・休業・廃業届出書」を1か月以内、愛知県は「開業(廃業)事務所等設置(移転・廃止)報告書」を1か月以内と、名称も期限も都道府県で違うので、住んでいる都道府県の税事務所のページで確かめます。「必要なもの」のリストに税務署の開業届だけが載っていて、こちらが抜けていることがよくあります。

期限と、同時に出す青色申告承認申請書

開業届の期限は、2026年1月1日以後の開業なら「開業した年の確定申告期限まで」です(所得税法229条。令和5年の改正で「1か月以内」から変わりました)。記載要領も「事業の開始、廃止等の事実があった日の属する年分の所得税の確定申告期限までに」と書いています。急ぐのは青色申告承認申請書のほうで、記載要領の5にあるとおり、1月15日までの開業はその年の3月15日、1月16日以降の開業は開業日から2か月以内です。開業届に「青色申告承認申請書 有」と書いて、同じ日に2枚出す形になります。条文と期限の詳しい話は開業届の期限の記事にあります。

実務としてどうするか

1. 手元に揃えるのは正本・マイナンバー・本人確認書類。印鑑と控えは用意しない

様式 PDF を国税庁からダウンロードして入力し、正本を1枚印刷します。マイナンバーカードがあればそれ1枚、なければ通知カード(または番号付き住民票)と運転免許証を持っていきます。郵送なら写しを添付台紙に貼ります。控えが要るなら自分でコピーし、マイナンバーの欄を写さないようにして、窓口でリーフレットをもらうか返信用封筒を入れます。印鑑は持っていっても、令和6年版の様式には押す欄がありません。

2. 屋号はなければ空欄で出す。職業と事業の概要は実態をそのまま書く

屋号が決まっていないなら空欄で出す形になります。職業は「ソフトウェア開発」「システムエンジニア」のように実態を書き、事業の概要は「業務委託により、Webアプリケーションの設計・開発を行う」のように、誰に何を提供するかが分かる形にします。確定申告書の職業欄と揃えておくと、個人事業税の判定で食い違いが出ません。書き方に迷う人は、会計ソフトの無料の作成サービスを使うと、質問に答える形で様式が埋まります。freee の「freee開業」もマネーフォワードの「マネーフォワード クラウド開業届」も、開業届と青色申告承認申請書を同じ入力から作れて、作成は無料です。作ったあとの帳簿づけを同じアカウントで続けられるので、開業届を出した日が会計ソフトの開始日になります。

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3. 税務署の開業届と一緒に、都道府県税事務所の事業開始等申告書を出す

税務署の開業届が済んだら、同じ週に都道府県税事務所の事業開始等申告書を出します。東京都は事業開始から15日以内で、開業届より期限が短いです。両方を出したら、開業届の控え(自分で作ったコピー+リーフレット)と申告書の控えを1つのフォルダにまとめておくと、あとで口座開設や雇用保険の特例申請で開業日を聞かれたときに、そのまま出せます。

まとめ

  • 書面で出す開業届に要るのは正本1枚・マイナンバー・本人確認書類。印鑑は2021年4月から不要、控えの収受印は2025年1月からなし
  • 法令の記載事項は氏名・住所・個人番号・納税地、開業の旨と日付、事業の概要、事務所等の所在地(施行規則98条)。屋号と職業は記載事項にないので、屋号はなければ空欄で出す形になり、職業は実態をそのまま書く
  • 出す先は納税地(原則住所地)の税務署。窓口に行かなくても郵送で出せる。期限は確定申告期限まで、青色申告承認申請書は開業から2か月以内(1月15日までの開業は3月15日)
  • 国税とは別に都道府県税事務所の事業開始等申告書があり、東京都は事業開始から15日以内

あわせてどうぞ

開業届と青色申告承認申請書の期限の条文は開業届の期限の記事に、e-Tax で出す入口と受信通知は開業届の e-Tax の記事に、職業欄と個人事業税の関係は確定申告書の職業欄の記事にまとめています。

この記事で参照した一次情報

本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。様式・本人確認の運用・都道府県の申告期限は変わることがあります。最新の情報および個別の判断は、国税庁のページ、各都道府県税事務所のページ、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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