単価交渉は更新日の30日前が目安|フリーランス法の1か月・6か月・30日

木のテーブルを囲んでノートに書き込みながら打ち合わせをする人たちの手元 単価・契約
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の契約に関する判断は弁護士または所轄の窓口にご確認ください。

単価交渉は「更新のタイミングで」と言われます。ところが、いつからが更新のタイミングなのかは誰も教えてくれません。

フリーランス法を読むと、1か月・6か月・30日という3つの期間が定められています。この3つを並べると、契約のどの時点で何が起きるかが決まっているので、そこから逆算できます。

先に結論

  • 1か月以上の業務委託には、報酬の減額の禁止と買いたたきの禁止がかかります(フリーランス法5条1項、施行令1条)
  • 6か月以上になると「継続的業務委託」に当たり、別の義務が加わります(同法13条1項、施行令3条)
  • 継続的業務委託の解除や不更新は、30日前までに予告しなければなりません(同法16条1項)
  • したがって交渉を切り出す目安は「更新日の30日前より前」です。16条1項は発注側の予告義務で、受注側の交渉期限を定めた条文ではありませんが、予告が少なくとも30日前までに来る建て付けなので、それより前に切り出しておくことになります

1か月以上で下げられなくなる

フリーランス法5条は、発注側に禁止事項を課しています。

特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条において同じ。)をした場合は、次に掲げる行為(中略)をしてはならない。
(中略)
二 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること。
(中略)
四 特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること。

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第5条第1項

「政令で定める期間」は次のとおりです。

(前略)第五条第一項の政令で定める期間は、一月とする。

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令 第1条

括弧書きに「契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む」とある点が実務では効きます。1か月未満の契約でも、更新を重ねて通算1か月以上になれば対象です。

ただし正直に書いておくと、これは下げられないことを保証する規定であって、相場並みの単価を相場以上に引き上げる材料にはなりません。第4号の買いたたきの禁止は「通常支払われる対価に比し著しく低い」という水準の話です。一方で、公正取引委員会と厚生労働省の解釈ガイドラインは、労務費などのコストが著しく上がったことが公表資料から分かるのに据え置かれた報酬の額や、報酬の額を決めるときに十分な協議が行われたかどうかを、買いたたきの判断要素として挙げています。コストが上がっているのに据え置かれている場合は、この考え方が交渉の根拠になります。

6か月以上は「継続的業務委託」になる

もう1つの期間は13条にあります。

特定業務委託事業者は、その行う業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(中略)に限る。以下この条及び第十六条第一項において「継続的業務委託」という。)の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、(後略)

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第13条第1項

法第十三条第一項の政令で定める期間は、六月とする。

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令 第3条

ここで定義された「継続的業務委託」が、次の30日前予告の対象になります。13条1項の括弧書きは「当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む」なので、3か月契約なら1回目の更新で通算6か月に達し、その更新後の契約(4〜6か月目)がこの区分に入ります。2回更新すれば通算9か月です。最初の3か月契約そのものは、原則としてまだ継続的業務委託ではありません。ただし公正取引委員会・厚生労働省の解釈ガイドラインは、契約の更新により通算して所定の期間以上続ける予定の業務委託も対象になるとしているので、最初から更新を前提にした契約では、更新前から対象になることがあります。

この区分に入ると、不更新の30日前予告(16条1項)に加えて、予告された日から契約が満了する日までの間に、解除の理由の開示を請求できます(同条2項)。

期間 何が発生するか 根拠
1か月以上 報酬の減額の禁止・買いたたきの禁止など5類型 法5条1項・施行令1条
6か月以上 「継続的業務委託」に該当 法13条1項・施行令3条
30日前 解除・不更新の予告義務 法16条1項

逆算の起点は30日前

交渉のタイミングを決めるうえで、いちばん具体的なのがこの条文です。

特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。次項において同じ。)をしようとする場合には、当該契約の相手方である特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第16条第1項

括弧書きで「契約期間の満了後に更新しない場合を含む」と明記されています。途中解約だけでなく、更新しないという判断も予告の対象です。

つまり更新しない場合、遅くとも更新日の30日前までには相手から予告が来る建て付けです。条文が定めているのは予告の期限であって、相手の判断がいつ固まるかではありませんが、予告が来てから単価の話を持ち出しても、それは交渉ではなく引き止めの依頼になります。

切り出す目安は更新日の30日前より前
相手が予告義務を果たす時点より前に、こちらから条件の話を出しておく。フリーランス法は受注側の交渉期限を定めていないので、これは法的な期限ではなく、16条1項から逆算した目安です。この逆算が使えるのは通算6か月以上になる更新のときで、3か月契約なら1回目の更新後の契約の満了(開始から6か月目)が最初の対象です。初回の3か月契約の満了は、更新が予定されていなければ継続的業務委託に当たらず、予告義務の対象外です。

更新のたびに条件は明示される

もう1つ押さえておくと有利になるのが、条件明示の規定です。

業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、(中略)特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(中略)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第3条第1項

更新も業務委託をした場合に当たるため、更新のたびに、報酬額が原則として書面または電磁的方法で明示されます。金額をその時点で決められない正当な理由がある場合は後日の明示でよく、時間単価×作業時間のように具体的な金額を出しにくい場合は算定方法の明示で足りるとされていますが、口頭だけで「来期も同じ条件で」と曖昧に始まる形は法が想定していません。明示された金額や算定方法が想定と違えば、その時点で指摘できます。

提示された金額を評価する材料としては、単価相場の数字がどこから来ているかと、単価50万円の手取りの記事が使えます。単価が5万円上がったときに手元にいくら残るかを先に計算しておくと、交渉の目標額を決めやすくなります。

実務としての組み立て

1. 契約書で「期間」と「更新の条件」を確認する

逆算の起点は更新日です。契約期間が何か月で、自動更新か個別更新かを最初に確認します。通算6か月に達した時点から30日前予告の対象になるので、いつその線を越えるかも把握しておきます。

2. 更新日の30日以上前に切り出す

切り出す内容は、単価そのものより先に担当している範囲の変化を並べるほうが噛み合います。着任時の想定と実際の役割がずれているなら、そこが条件を見直す理由になります。

3. 通らなかった場合の選択肢を先に持っておく

交渉が成立しなかったときに動けるかどうかで、話の進め方が変わります。他の案件の提示額を知らない状態では、提示された金額が妥当かどうかも判断できません。エージェントによって扱う案件の領域も企業側の予算帯も違うため、同じスキルでも提示額は変わります。

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4. 一方的な減額には応じる義務がない

交渉の結果として合意のうえで金額を変えるのと、相手が一方的に下げるのは別です。5条1項2号は「特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること」を禁じています。1か月以上の契約であれば、この条文が働きます。

違反があると考えられる場合、公正取引委員会または中小企業庁長官に申し出て、措置を求めることができます(同法6条1項)。

まとめ

  • 1か月以上の業務委託には報酬の減額の禁止と買いたたきの禁止がかかる(法5条1項・施行令1条)。更新で通算1か月以上になる場合も含む
  • 6か月以上で「継続的業務委託」に該当する(法13条1項・施行令3条)
  • 継続的業務委託の解除・不更新は30日前までに予告が必要(法16条1項)。不更新も含むと条文に明記されている
  • したがって交渉を切り出す目安は更新日の30日前より前。法が受注側の期限を定めているわけではないが、それを過ぎると相手の予告が先に来る建て付けになっている
  • 更新のたびに報酬額が原則として書面または電磁的方法で明示される(法3条1項)ので、提示額や算定方法を文字で確認できる
  • 合意なき一方的な減額は5条1項2号の禁止行為で、申出の窓口も法律に定められている

この記事で参照した一次情報

本記事は2026年9月時点で上記の一次情報を確認して書いています。予告義務には厚生労働省令で定める例外があり、災害その他やむを得ない事由により予告が困難な場合などが定められています。契約の期間や更新の扱いは個別の契約書によって異なります。法令は改正されることがあるため、最新の情報および個別の判断は弁護士または公正取引委員会・中小企業庁の窓口にご確認ください。

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