個人事業主の予定納税はいつ・いくらから|前年の申告納税額15万円が境で1年目は来ない。減額申請は7/15と11/15まで

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

独立して2年目の6月、税務署から「予定納税額の通知書」が届いて手が止まったことがあります。所得税は3月に払い終えたつもりでしたが、第1期分と第2期分を合計すると前年に払った所得税の3分の2でした。1年目には来なかったものが、2年目に突然来ます。

「個人事業主 予定納税 いくらから」で検索すると「前年の所得税が15万円以上なら対象」と書いた記事が並びます。所得税法を読むと、境目は所得税の額ではなく「予定納税基準額」という別の数字で、源泉徴収された税額を引いた後の、復興特別所得税を含めた金額でした。減額申請の期限も条文では11月15日ですが、2026年は日曜日に当たるため11月16日(月)です。

この記事では、予定納税の対象になる条件と1年目に来ない理由、いつ・いくら払うか、単価50万円のエンジニアに2年目に来る額、売上が落ちた年の減額申請の要件と期限を、所得税法の条文と国税庁の案内で確定させます。手取りの積み上げは単価50万円の手取りの記事で扱ったので、この記事は「3月以外にいつ所得税を払うか」に絞ります。

先に結論

  • 対象は、前年分の申告納税額をもとにした予定納税基準額が15万円以上の人です(所得税法104条1項)。独立1年目は前年分の事業の申告がないので来ず、2年目の6月に初めて届きます
  • 基準額の3分の1ずつを7月1日〜31日と11月1日〜30日に払い、残りは翌年の確定申告で精算します。単価50万円の例では令和7年分の所得税203,900円に対して各期67,900円、精算は31,400円です
  • 今年の見積税額が基準額の7割以下なら、税務署は減額を承認しなければならないと条文にあります(113条2項2号)。期限は7月15日と11月15日で、2026年の11月分は11月16日(月)。見積額が15万円未満なら予定納税そのものがなくなります(114条4項)

対象は「前年の申告納税額」で決まる。独立1年目に通知が来ないのはこのため

予定納税を定めているのは所得税法104条です。条文は「前年分の所得税の額」ではなく、第1号の金額から第2号の金額を引いた「予定納税基準額」が15万円以上かどうかで対象を決めています。

居住者(第百七条第一項(特別農業所得者の予定納税額の納付)の規定による納付をすべき者を除く。)は、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額(以下この章において「予定納税基準額」という。)が十五万円以上である場合には、第一期(その年七月一日から同月三十一日までの期間をいう。以下この章において同じ。)及び第二期(その年十一月一日から同月三十日までの期間をいう。以下この章において同じ。)において、それぞれその予定納税基準額の三分の一に相当する金額の所得税を国に納付しなければならない。

出典:e-Gov法令検索 所得税法 第104条第1項(柱書のみ。第1号は前年分の課税総所得金額に係る所得税の額、第2号は前年分の所得につき源泉徴収された所得税の額。2026年10月1日施行版。「十五万円以上」と「三分の一」の2か所はこの記事で強調した)

第1号は前年分の課税総所得金額に対する所得税の額で、譲渡所得・一時所得・雑所得などがあれば除いて計算し直します。第2号は前年分の所得から源泉徴収された所得税の額です。基準額は「前年の確定申告書で源泉徴収税額を引いた後に残った、納める税額」で、国税庁のタックスアンサーNo.2040も「原則として、その年の5月15日現在で確定している前年分の申告納税額がそのまま予定納税基準額となります」と説明しています。復興特別所得税は復興財確法16条で、所得税の基準額に2.1%を上乗せした合計で15万円以上かを判定します。

独立1年目に通知が来ないのは、ここが理由です。会社員だった前年は年末調整で税額が確定していて申告納税額がなく、退職した年の確定申告は還付になることが多いので、やはり申告納税額が出ません。前年分の事業所得で初めて納める税額が出るのは2年目の3月で、それが15万円以上なら同じ年の6月に通知が届きます。報酬から10.21%が源泉徴収されている人は引いた後の金額で判定されるので、所得税の額が15万円を超えていても基準額は下回ることがあります。計算の基準日は5月15日で(105条)、税務署長は6月15日までに書面で通知します(106条1項)。電子交付を希望した人には、書面に代えてe-Taxのメッセージボックスで通知されます(タックスアンサーNo.2040)。

いつ・いくら払うか。第1期は7月、第2期は11月、残りは翌年3月に精算

納付は基準額の3分の1ずつを第1期(7月1日〜7月31日)と第2期(11月1日〜11月30日)に行い、100円未満は切り捨てです(104条1項・3項)。納期限が土日祝に当たるときは翌日が期限になり(国税通則法10条2項。土曜日は同法施行令2条2項)、2026年は11月1日が日曜日なので、国税庁の案内では第2期の納付期間を11月2日から11月30日としています。残りの3分の1に当たる分は、翌年2月16日から3月15日の第3期に、確定申告書で計算した税額から予定納税額を引いて納めます(120条・128条)。

基準額ごとの予定納税額と精算額は次のとおりです。精算額は今年の税額が前年と同じ場合で、予定納税のほうが多ければ還付になります。

前年の申告納税額(基準額) 第1期・第2期の各納付額 確定申告で納める残り
149,900円 なし(15万円未満) 全額を3月に納付
150,000円 50,000円ずつ 50,000円
300,000円 100,000円ずつ 100,000円
600,000円 200,000円ずつ 200,000円

振替納税なら第1期分が7月31日、第2期分が11月30日に口座から引き落とされます(国税庁「令和8年分 予定納税について」)。予定納税の振替日は納期限の当日です。ダイレクト納付・クレジットカード・スマホアプリ(30万円以下)・納付書でも納められ、e-Taxで通知を受けた人には納付書が送られません。期限に遅れたり残高不足で引き落とせなかったりすると翌日から延滞税がかかり(国税通則法60条1項4号)、2026年中は納期限の翌日から2か月までが年2.8%、それ以後が年9.1%です(タックスアンサーNo.9205)。

単価50万円なら、2年目の7月と11月に67,900円ずつ来る

単価50万円の手取りの記事の前提(年商600万円・経費100万円・40歳未満・単身)に、この記事では源泉徴収なしの条件を加えます。令和7年分の所得税と復興特別所得税は203,900円でした。源泉徴収がないので、この額がそのまま予定納税基準額になり、203,900円 ≧ 150,000円 で対象です。

予定納税額は 203,900円 ÷ 3 = 67,966.6…円 で、100円未満を切り捨てて第1期 67,900円、第2期 67,900円、合計135,800円です。令和8年分は基礎控除が本則62万円+特例加算42万円の104万円に変わるため、同じ年商でも所得税は167,200円に下がります。確定申告で納める第3期分は 167,200円 − 135,800円 = 31,400円になります。

令和8年度税制改正の基礎控除の引き上げは、予定納税の計算に反映されません。国税庁の通知書の説明にも「令和8年度税制改正における基礎控除の見直しについては、予定納税額の計算上、考慮されていません」とあり、控除が増えた分は確定申告で精算されます。

今年の売上が落ちたら減額申請。7割以下なら税務署は承認しなければならない

前年の税額で3等分されるので、今年の売上が落ちている年は払い過ぎになります。そのための手続が減額申請です(111条)。第1期・第2期の両方を減らすなら6月30日の現況で見積もって7月15日まで、第2期だけなら10月31日の現況で見積もって11月15日までに、所轄税務署長に申請します。条文の期限は11月15日ですが、2026年は日曜日に当たるため国税通則法10条2項で翌日に繰り下がり、国税庁の「令和8年分 予定納税について」も「令和8年11月16日(月)まで」と案内しています。

113条2項には、税務署長が承認しなければならない場合が2つ書かれています。1つは事業の廃止・休止・転換、失業、災害・盗難・横領による損害、医療費の支払によって見積額が基準額を下回ると認められる場合。もう1つは、理由を問わず見積額が基準額の10分の7以下になると認められる場合です。売上が3割以上落ちた年は後者に当たります。承認されると予定納税額は見積額の3分の1に置き換わり(114条1項)、見積額が15万円に満たないときは「予定納税額は、ないものとする」と同条4項に書かれています。

基準額が30万円の人を例に、見積額ごとの結果を並べます。見積額は今年の所得と所得控除の見積りに税率を当てた所得税の額から、源泉徴収される見積額を引いたものです(所得税法施行令261条。復興特別所得税を含みます)。

今年の申告納税見積額 基準額30万円に対する割合 減額申請の結果
240,000円 80% 113条2項の「承認しなければならない」要件の外。調査の結果次第
200,000円 66.7%(7割以下) 承認。第1期・第2期とも66,600円に
140,000円 46.7%(15万円未満) 承認され、予定納税額はなし

申請書には見積額と理由のほか、「取引の記録等に基づいて申告納税見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類」を添付することになっています(112条2項)。6月末までの売上と経費が月次で締まっていないと、この書類が作れません。

実務としてどうするか

1. 通知書の「予定納税基準額」を前年の申告書と突き合わせる

通知書の基準額が、前年の確定申告書第一表の「申告納税額」と一致しているかを見ます。源泉徴収や譲渡所得・一時所得があった人は一致せず、通知書に基準額の計算の内訳が載ります。確定申告のときは申告書の「予定納税額」欄に第1期分と第2期分の合計を書きます。国税庁の通知書には「申告がない場合は、納める税金が過大に計算されてしまいます」とあり、書き忘れると二重に納める計算になります。

2. 6月末の試算表で見積額を出し、7割以下なら7月15日までに出す

1月から6月の売上と経費を締めて年間に引き直し、所得控除を前年並みに置いて税額を見積もります。基準額の7割以下なら113条2項2号で承認される申請です。7月15日を過ぎたら10月31日の現況で第2期分だけ申請する形になり、2026年の期限は11月16日です。

3. 納付の仕訳は経費ではなく事業主貸

所得税は必要経費に算入しないと所得税法45条1項2号にあります。事業用口座から払ったときは租税公課ではなく事業主貸で記帳する形になり、延滞税も同じ扱いです。

4. 月次で締まっている帳簿が、そのまま減額申請の添付書類になる

freee会計もマネーフォワード クラウド確定申告も、銀行口座とカードを連携して取引を登録しておけば月次の損益が画面で出ます。6月末で締めた数字に所得控除を置けば見積額が出て、112条2項の添付書類になります。領収書を年末にまとめて入力する運用だと、7月15日の時点で上半期の数字がありません。

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まとめ

  • 対象は前年分の申告納税額をもとにした予定納税基準額が15万円以上の人(所得税法104条1項)。源泉徴収税額を引いた後、復興特別所得税を含めて判定する。独立1年目は来ず、2年目の6月15日までに通知が届く
  • 基準額の3分の1ずつを7月と11月に納付、100円未満切り捨て。振替日は7月31日と11月30日。残りは翌年の確定申告で精算し、申告書の「予定納税額」欄に書き忘れると二重計算になる
  • 単価50万円・年商600万円なら令和7年分の税額203,900円から第1期・第2期とも67,900円。令和8年分の基礎控除104万円は予定納税に反映されず、精算は31,400円
  • 見積額が基準額の7割以下なら税務署は減額を承認しなければならない(113条2項2号)。期限は7月15日と11月15日で、2026年の11月分は11月16日(月)。見積額が15万円未満なら予定納税額はなし(114条4項)。仕訳は事業主貸

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この記事で参照した一次情報

本記事は2026年10月時点で上記の一次情報を確認して書いています。延滞税の割合は年ごとに、減額申請の期限の繰り下げは暦によって変わります。法令は改正されることがあるため、最新の情報および個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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