PDFで送った請求書の控えはデータのまま保存|個人事業主はタイムスタンプ不要、売上5,000万円以下なら検索要件もなし

ノートパソコンのキーボードの上に置かれたスマートフォンと、手前の罫線入りノートとペン インボイス・請求書
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

請求書をPDFにしてメールで送ったあと、その控えをどこに置くかを決めていなかったことがあります。送信済みメールに残っているから足りる、印刷して紙のファイルに綴じておけば足りる、と思っていました。「電子帳簿保存法 請求書 発行側」で検索すると、「タイムスタンプが要る」「検索できるシステムが要る」「保存していないと青色申告が取り消される」と書かれた記事が並びます。

条文と国税庁の一問一答(令和8年7月版)を読むと、送った側の控えも保存の対象で、ただし個人事業主が満たす要件はタイムスタンプではなく「事務処理規程」で、前々年の売上が5,000万円以下なら検索要件そのものが不要でした。この記事では、発行側に保存義務がある条文、個人事業主が満たす3つの要件、保存期間、やってはいけない保存の形、保存できていなかった場合に国税庁が書いていることを、電子帳簿保存法・施行規則・所得税法・一問一答で確定させます。請求書の欄の作り方は請求書テンプレートの記事にあるので、この記事は「送った控えの保存」の1点に絞ります。

先に結論

  • PDFで送った請求書は電子取引で、送った側の控えも電子データのまま保存する対象です。電子帳簿保存法2条5号の取引情報は「受領し、又は交付する」書類の記載事項で、施行規則4条1項は「送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合」の場所・期間で保存する、と書いています
  • 個人事業主が満たす要件は改ざん防止の事務処理規程(国税庁のWord 1枚)、画面とプリンタで表示できること、検索できることの3つで、前々年の売上5,000万円以下なら検索要件は不要です(施行規則4条1項柱書、一問一答 問51)。タイムスタンプは4択の1つで、規程を選べば要りません
  • 2024年1月1日以後の取引は、紙に印刷しただけでは保存になりません(一問一答 問22・問89)。保存期間は所得税法施行規則で請求書の控えは5年、インボイス登録済みなら消費税法で7年です

送った側にも保存義務がある。条文は「受領し、又は交付する」

電子帳簿保存法7条は、所得税と法人税の保存義務者が電子取引を行った場合に「当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない」と定めています。その取引情報は2条5号で「取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項」と定義され、受け取る側だけでなく交付する側が対象に入る書き方です。

施行規則4条1項はさらに具体的で、電子取引の取引情報を「当該取引情報の受領が書面により行われたとした場合又は当該取引情報の送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合に」国税に関する法律で保存する場所に、その期間、保存する、としています。紙で送っていれば控えを取っておく場面なので、PDFで送ったときはその控えに当たるデータを置いておく形です。国税庁の一問一答はこれを1文で書いています。

電子的に受け取ったり送付した請求書や領収書等については、データのまま保存しなければならないこととされており(法7)、その真実性を確保する観点から、以下のいずれかの条件を満たす必要があります(規則4①)。
⑴ タイムスタンプが付与されたデータを受領(規則4①一)
⑵ 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す(規則4①二)
※ 括弧書の取扱いは、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事項に処理に関する規程を定めている場合に限る。
⑶ データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用してデータの授受及び保存を行う(規則4①三)
⑷ 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定め、備付け、運用する(規則4①四)

出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(PDF)問30(令和8年7月版、18ページ目)

問30はこの直後に、要件を満たしてデータを保存しているなら「念のため書面に出力したものを併せて保存しておくといった対応をすることは、特段禁止されていません」とも書いています。紙を残すこと自体が禁止なのではなく、紙だけではデータの保存に代えられない、という順番です。

個人事業主が満たす要件は3つ。タイムスタンプは選ばなくてよい

施行規則4条1項が求める要件を、1人で請求書を出している個人事業主に当てはめると次の3つになります。

要件 個人事業主がやること 根拠
改ざん防止の措置(4択のいずれか) 国税庁の「事務処理規程(個人事業者の例)」を印刷して備え付け、そのとおり運用する 施行規則4条1項4号、一問一答 問33
画面と書面に出力できること パソコンの画面で開け、プリンタで出せる状態にしておく。常設していなくても求めに応じて速やかに出力できれば可 施行規則2条2項2号、一問一答 問21
日付・金額・取引先で検索できること 前々年の売上5,000万円以下なら不要(税務調査でダウンロードの求めに応じられる状態にしておく)。超える年はファイル名で代替 施行規則4条1項柱書・2条6項5号、一問一答 問50・問51

出典:電子帳簿保存法施行規則(2025年4月1日施行版)、国税庁 一問一答【電子取引関係】令和8年7月版、国税庁「電子取引データ保存要件チェックシート」(令和6年11月)

改ざん防止の措置は4つの選択肢から1つ選ぶ形で、タイムスタンプはそのうちの2つです。4つ目の「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと」を選べば、タイムスタンプも専用システムも要りません。国税庁は「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(個人事業者の例)」をWordで配布していて、本文は「訂正削除の原則禁止」「訂正削除を行う場合」の2つの見出しと、施行日の1文だけです。訂正や削除をするときは申請書に申請日・取引伝票番号・取引先名・訂正削除の内容と理由など8項目を書いて、データと同じ期間保存する、という内容です。

検索要件は、施行規則4条1項柱書の括弧内で、判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者が「電磁的記録の提示等の要求に応じることができるようにしているとき」は除かれます。個人事業者の判定期間はその年の1月1日から12月31日、基準期間はその前々年です(同条2項)。一問一答 問51は、基準期間がない新規開業者の初年と翌年も検索要件が不要になること、この「売上高」は営業外収入や雑収入を含まないことを書いています。年商1,000万円前後のフリーランスは、この除外に入ります。

国税庁が個人事業主向けに書いた例が一問一答の問19で、専用の保存ソフトを使っていない前提の問いに、次の3つで「要件を満たしていることとなります」と答えています。

1 請求書データ(PDF)のファイル名に、規則性をもって内容を表示する。
 例) 2021年(令和3年)1月31日に株式会社霞商店から受領した110,000円の請求書 ⇒「20210131_㈱霞商店_110000」
2 「取引の相手先」や「各月」など任意のフォルダに格納して保存する。
3 【問33】に記載の事務処理規程を定めて備付け、定めた規程に沿って運用する。

出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(PDF)問19(令和8年7月版、11〜12ページ目)

この例は受け取った請求書のものですが、問30が受領と送付を同列に扱っているので、送った控えにも同じ方法を使う形になります。ファイル名の順序は、問50が日付・金額・取引先を「統一した順序で」とだけ定めていて、問19・問50の例は日付・取引先・金額、令和6年11月のリーフレットは「日付・金額・取引先の順番」です。国税庁の2つの資料で順番が違うので、どちらかに決めて統一することが要件です。取引先ごとにフォルダを分けていれば、ファイル名は日付と金額だけでも足ります(問50)。

保存期間は所得税法施行規則で5年、インボイス登録済みなら消費税法で7年

電子帳簿保存法は保存の方法を定める法律で、期間はそれぞれの税法で決まります(一問一答 問17)。送った請求書の控えに当たる期間は次のとおりです。

何を 期間 根拠
請求書の控え(青色申告者) 5年 所得税法施行規則63条1項3号「自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し」
請求書の控え(白色申告者) 5年 所得税法施行規則102条3項2号・4項
帳簿 7年 所得税法施行規則63条1項・102条4項
適格請求書の写し(インボイス登録済み) 7年 消費税法57条の4第6項、同施行令70条の13第1項

出典:所得税法施行規則・消費税法・同施行令(いずれも2026年10月1日施行版)、国税庁 一問一答【電子取引関係】問17(令和8年7月版)

同じやり方で保存する領収書の控えは、現金預金取引等関係書類に当たるので7年です(施行規則63条1項の括弧書き)。起算日は請求書の日付ではなく、所得税法施行規則63条4項で「その作成又は受領の日の属する年の翌年三月十五日の翌日」です。2026年中に送った控えは2027年3月16日から5年で、2032年3月15日までです。消費税法側は、提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間で(施行令70条の13第1項)、2026年分なら2034年2月末までです。インボイス登録済みの人は控えを7年に揃えておけば両方を満たします。

紙に印刷しただけ、スキャンしただけは保存にならない

2023年12月31日までの電子取引には、出力した書面を保存しておけば足りる宥恕措置がありましたが、2024年1月1日以後の取引には適用されません(一問一答 問89)。いまの猶予措置(施行規則4条3項)は、要件に従って保存できなかったことに「相当の理由」があると税務署長が認め、かつ、データと出力書面の両方を求めに応じて提示・提出できる場合に限られます。データそのものを残していない状態は、猶予措置でも救われません。

やりがちな保存の形 可否 根拠
PDFを印刷して綴じ、データは消す 不可(出力書面のみの保存は認められない) 一問一答 問22・問89
印刷した紙をスキャンして保存する 不可 一問一答 問99
請求書を添付したメールごと保存する 可(添付だけを保存する形も可) 一問一答 問36
請求書作成サービスの中に保存したまま、PDFを別に保存しない 可(内容が変更されるおそれがなく、合理的な方法で編集された状態なら) 一問一答 問47

出典:国税庁 一問一答【電子取引関係】令和8年7月版、電子帳簿保存法施行規則4条3項

「相当の理由」は、問93で「システム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め」と広く書かれ、令和6年11月のリーフレットは「人手不足」「システム整備の資金不足」も含まれ、事前届出は不要としています。保存できる環境が整っているのに保存していない場合は適用を受けられません(問93)。

保存できていなかったら。国税庁は「取消対象となり得る」と「直ちに取り消されない」の両方を書いている

検索候補の「しないとどうなる」に当たる一次情報は、一問一答 問98です。2024年1月1日以後の電子取引について、相当の理由がなく要件に従って保存されていない場合は「青色申告の承認の取消対象となり得ます」と書き(所得税法150条1項1号、電子帳簿保存法8条3項2号)、同時に取消しは「違反の程度等を総合勘案の上」判断している、と続けています。さらに注で、電子データの一部を保存せず書面を保存していた場合について「その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにもかかわらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません」としています。事務運営指針「個人の青色申告の承認の取消しについて」も「今後の改善可能性等を総合勘案」して判断する、としています。保存漏れがあったときに取れる行動は、問98の解説にあるとおり、原因をまとめておくことと再発防止策を講じることです。重加算税の10%加重(電子帳簿保存法8条5項)は、データを改ざんして売上除外や経費の水増しをした場合の話で(問64)、保存漏れそのものの罰則ではありません。

実務としてどうするか

1. 国税庁の事務処理規程(個人事業者の例)をダウンロードし、施行日を入れて印刷しておく

国税庁の参考資料ページから「事務処理規程(個人事業者の例)」のWordを取り、末尾の「この規程は、令和○年○月○日から施行する」に日付を入れて印刷し、請求書の控えを置く場所と一緒に保管します。これで施行規則4条1項4号の改ざん防止の措置が整います。訂正や削除が要るときは、規程にある申請書の8項目を書いた紙かファイルを同じ期間残します。

2. 送ったPDFを「日付_取引先_金額」のファイル名で年ごとのフォルダに入れる

請求書をPDFにしたら、ファイル名を「20261031_株式会社〇〇_660000.pdf」のように3要素を決めた順序で付け、年ごとのフォルダに入れます。前々年の売上が5,000万円以下なら検索要件は不要ですが、ダウンロードを求められたときに探せる状態が要るので、この並びにしておくと問19の例と同じ形になります。メールの送信済みフォルダに残っているだけの状態からは、添付をこのフォルダに移す形です。

3. 月に2枚以上出すなら、請求書を会計ソフトの中で作って、控えもその中に置く

請求書作成サービスの中にデータが保存されていれば、問47のとおり、PDFを別に保存しなくても保存になります。freee会計は2022年8月26日にJIIMAの「電子取引ソフト法的要件認証」を取得していて、freee請求書の製品ページは「電子帳簿保存法にも完全対応」と書いています。マネーフォワード クラウド確定申告も「電子取引データ保存」を含む区分でJIIMA認証を取得し(2025年4月24日更新のサポートページ)、マネーフォワード クラウドBoxには、メールに添付されたファイルを自動でBoxへ保存する機能があり、電子取引データ保存区分に対応しているとしています(有料プランの範囲)。手で付けるファイル名と規程の運用を、ソフト側の保存に置き換える形になります。

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まとめ

  • PDFで送った請求書の控えは電子取引データとして保存の対象(電子帳簿保存法2条5号「受領し、又は交付する」、施行規則4条1項「送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合」、一問一答 問30)
  • 個人事業主の要件は事務処理規程・画面とプリンタ・検索の3つ。タイムスタンプは4択の1つで、国税庁のWord 1枚の規程を選べば不要。前々年の売上5,000万円以下なら検索要件も不要(問51)
  • 保存期間は所得税法施行規則で請求書の控え5年・帳簿7年、インボイス登録済みなら消費税法で7年。起算日は翌年3月16日
  • 2024年1月以後は紙に出力しただけ・スキャンしただけでは保存にならない(問22・問89・問99)。保存漏れは「取消対象となり得る」と「直ちに取り消されない」の両方が問98に書かれている

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この記事で参照した一次情報

本記事は2026年10月時点で上記の一次情報を確認して書いています。一問一答は改訂で問番号が変わることがあり、本記事の問番号は令和8年7月版のものです。会計ソフト各社の対応範囲と料金は変わることがあるため、最新の情報および個別の判断は、各社の公式ページ、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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