個人事業主の消費税はいつから払う?|1,000万円を超えた2年後が原則、前年1〜6月で前倒し、インボイス登録なら登録日から

明るい木目の机に置かれたノートパソコンと、コーヒーカップ、開いた方眼ノートとペン 確定申告・税金
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

年商が1,000万円に届きそうになった年の秋、「超えたら翌年から消費税を払う」と思い込んで、翌年の単価に10%を乗せる相談を始めたことがあります。条文を読むと、判定に使うのは前年ではなく前々年の売上で、課税事業者になるのは超えた年の2年後でした。前年上半期で前倒しになる特例も、「売上の代わりに給与の支払額で判定してもよい」という3項があり、従業員を雇っていない1人のエンジニアは給与0円で判定できます。インボイス登録をした人は、売上に関係なく登録した日からです。

この記事では、課税事業者になる日が「2年後の1月1日」「翌年の1月1日」「登録日」のどれで決まるかを消費税法9条・9条の2・附則44条で確定させ、開業1年目から5年目までの判定表、課税事業者になった年に出す届出書と3月31日の申告期限までを整理します。税込か税抜かの判定は年収1,000万円の手取りの記事、登録後の2割・3割特例は2割特例が終わったらの記事で扱ったので、ここでは「いつから」に絞ります。

先に結論

  • 原則は基準期間=前々年の課税売上高が1,000万円を超えた年から課税事業者です(消費税法2条1項14号・9条1項)。2026年に初めて超えたなら2028年1月1日からで、2027年はまだ免税です。免税だった年の売上は税込の全額で数えます(消費税法基本通達1-4-5)
  • 前倒しになるのは特定期間=前年1月1日〜6月30日の課税売上高が1,000万円を超えた場合で、翌年から課税です(9条の2第1項・4項)。ただし判定は給与等支払額に置き換えてよく(同条3項)、従業員がいなければ0円なので翌年も免税のままにできます
  • インボイス登録をすると売上に関係なく登録日から課税事業者です(9条1項の括弧書き、平成28年改正法附則44条4項)。翌年1月1日からなら申請は12月17日までです。課税事業者になった年は届出書を速やかに出し、申告と納付は翌年3月31日です(租税特別措置法86条の4)

原則は「2年前の売上」で決まる。1,000万円を超えた年の翌々年から

消費税の納税義務は、その年の売上ではなく「基準期間」の売上で決まります。消費税法2条1項14号は個人事業者の基準期間を「その年の前々年」と定義し、9条1項が基準期間の課税売上高1,000万円以下なら納税義務を免除すると書いています。

事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

出典:e-Gov法令検索 消費税法(昭和63年法律第108号)第9条第1項(2026年10月1日施行版。括弧書きの「適格請求書発行事業者を除く」はこの記事で強調した)

個人事業者の課税期間は1月1日から12月31日です(19条1項1号)。2026年の売上が初めて1,000万円を超えた場合、2027年の基準期間は2025年なので免税のまま、2028年の基準期間が2026年になるので、2028年1月1日から課税事業者です。

数える金額は、免税事業者だった年なら税込の全額です。免税事業者の売上には消費税が課されていないため、受け取った金銭の全額を課税売上高とすることが消費税法基本通達1-4-5に書かれています。税抜909万0,910円の売上は税込1,000万0,001円で、1,000万円を超えます。

前年1〜6月で前倒しになる。ただし判定は売上か給与のどちらでもよい

基準期間が1,000万円以下でも、「特定期間」の課税売上高が1,000万円を超えると、その年から課税事業者になります(9条の2第1項)。特定期間は個人事業者なら「その年の前年一月一日から六月三十日までの期間」です(同条4項1号)。2026年1〜6月の売上が1,000万円を超えれば、2027年は基準期間(2025年)が少なくても課税です。

国外事業者以外の事業者が第一項の規定を適用する場合においては、前項の規定にかかわらず、当該事業者が第一項の特定期間中に支払つた所得税法第二百三十一条第一項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書に記載すべき同項の給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものの合計額をもつて、第一項の特定期間における課税売上高とすることができる。

出典:e-Gov法令検索 消費税法 第9条の2第3項(2026年10月1日施行版。末尾の「とすることができる」はこの記事で強調した)

特定期間の判定は、売上の代わりに、その期間に支払った給与等の合計額を使ってよい、という規定です。国税庁のタックスアンサーNo.6501も「いずれの基準で判定するかは納税者の任意です」と書いています。給与等の範囲は支払明細書に載せる給与等の金額で(消費税法施行規則11条の2)、外注費は含みません。

1人で受託開発をしていて誰にも給与を払っていなければ、特定期間の給与等支払額は0円です。2026年1〜6月に1,050万円の売上があっても、給与で判定すれば2027年は免税のままです。特定期間で課税になるのは、上半期の売上と給与等の支払額がともに1,000万円を超えた場合に限られます。前年3月1日開業なら特定期間は3月1日からの4か月で、6か月分に換算しません(No.6531)。

インボイス登録をすると、売上に関係なく登録日から課税

9条1項の括弧書きにあるとおり、適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)は基準期間の売上が1,000万円以下でも免税になりません。本則の57条の2第1項は免税事業者を登録の対象から外していますが、平成28年改正法附則44条4項の経過措置で、2023年10月1日から2029年9月30日までの日を含む課税期間中に登録を受けた免税事業者は、登録日からその課税期間の末日までの売上について納税義務を負います。年の途中で登録すれば、その日以後の売上が申告対象です(No.6498注1、No.6501)。

翌年1月1日から登録を受けたい場合は、課税期間の初日から起算して15日前の日、個人なら12月17日までに申請書を出すことになっています(57条の2第2項後段、消費税法施行令70条の2第1項)。登録後の2割・3割特例と、登録をやめる期限は2割特例が終わったらの記事にまとめています。

もう1つ、消費税課税事業者選択届出書を出して自分で課税事業者になる入口があります。提出した年の翌年から課税事業者になり(9条4項)、開業した年に出せばその年からです。一度選ぶと2年間は免税に戻れません(同条6項)。

開業1年目から5年目まで。自分の年を表に当てはめる

2025年1月に開業し、2025年に800万円(1〜6月は350万円)、2026年に1,200万円(1〜6月は650万円)、2027年に1,300万円(いずれも税込)を売り上げた場合の判定です。

その年 見る期間と金額 判定
2025年(開業年) 基準期間(2023年)なし。特定期間なし 免税
2026年 基準期間(2024年)なし。特定期間(2025年1〜6月)350万円 免税
2027年 基準期間(2025年)800万円。特定期間(2026年1〜6月)650万円 免税
2028年 基準期間(2026年)1,200万円が1,000万円超 課税。届出書は基準期間用
2029年 基準期間(2027年)1,300万円が1,000万円超 課税

2026年1〜6月が1,050万円だったとしても、給与等支払額0円で判定すれば2027年は免税のままです。課税事業者になる入口は3つあり、始まる日と出す書類が違います。

入口 課税事業者になる日 出す書類
基準期間(前々年)が1,000万円超 超えた年の翌々年1月1日 課税事業者届出書(基準期間用)を速やかに
特定期間(前年1〜6月)が1,000万円超 翌年1月1日 課税事業者届出書(特定期間用)を速やかに
インボイス登録 登録日(翌年1月1日からなら、1月1日の15日前の12月17日までに申請) 登録申請書。届出書は翌年以後は不要

課税事業者になったら、届出書を速やかに出し、申告は翌年3月31日

基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた事業者は、その旨の届出書を「速やかに」納税地の税務署長に出すことになっています(57条1項1号)。様式は「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」で、特定期間で課税になる人は「(特定期間用)」です。e-Taxか書面で出します。インボイス登録を受けている人や選択届出書を出した人は、翌課税期間以後はこの届出書を出す必要がありません。

申告と納付の期限は、消費税法45条1項では課税期間の末日の翌日から2か月以内ですが、個人事業者は租税特別措置法86条の4で「その年の翌年三月三十一日」に延びています。前年の消費税の年税額(地方消費税を除く)が48万円を超えた年は、1〜6月分の中間申告を7月1日から2か月以内、8月31日までに行います(No.6609)。

やること 期限 根拠
課税事業者届出書(基準期間用・特定期間用) 事由が生じたら速やかに 消費税法57条1項1号
翌年1月1日からのインボイス登録申請 12月17日(1月1日の15日前) 消費税法57条の2第2項、施行令70条の2
簡易課税制度選択届出書 適用する年の前年12月31日(2割・3割特例を使った翌年は例外) 消費税法37条1項
確定申告と納付 翌年3月31日(土日祝なら翌日以降の開庁日) 租税特別措置法86条の4、国税通則法10条2項
中間申告(前年の年税額48万円超) 8月31日(7月1日から2か月以内) 消費税法42条6項、No.6609

実務としてどうするか

1. 契約書の税込・税抜を見て、前々年と前年1〜6月の売上を出す

免税の年は税込の全額で数えるので、契約書が税抜表示なら1.1倍した請求額を足します。前々年が1,000万円超なら今年から課税、前年1〜6月が1,000万円超でも給与等支払額が0円なら免税、の順に当てはめます。

2. 課税になる年が決まったら、届出書を出す

基準期間用か特定期間用の課税事業者届出書を、e-Taxソフトか書面で納税地の税務署に出します。翌年1月1日からインボイス登録をするなら12月17日までに登録申請書を出し、課税事業者届出書は翌年以後は要りません。

3. 課税事業者になる年の1月1日から、取引ごとに税区分を付ける

課税事業者になった年は、売上と仕入れの1件ごとに課税・非課税・不課税の区分を付けて、年末に消費税の申告書と付表を作ることになります。年の途中から区分を付け直すと、1月に遡って取引を開き直す形になります。freee会計もマネーフォワード クラウド確定申告も、課税事業者の設定に切り替えると取引登録に税区分の欄が出て付表まで集計されるので、切り替えは1月の最初の取引を登録する前に済ませておくことになります。

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まとめ

  • 判定に使うのは前々年(基準期間)の課税売上高。1,000万円を超えた年の翌々年1月1日から課税事業者で、翌年はまだ免税(消費税法2条1項14号・9条1項)
  • 免税の年の売上は税込の全額で数える(通達1-4-5)。税抜909万0,910円で超える
  • 前年1〜6月(特定期間)が1,000万円超なら翌年から課税。ただし給与等支払額で判定してよく、従業員がいなければ0円で免税のまま(9条の2第3項)
  • インボイス登録は登録日から課税。翌年1月1日からなら12月17日までに申請(附則44条4項、施行令70条の2)
  • 課税事業者になったら届出書を速やかに出し、申告・納付は翌年3月31日(租税特別措置法86条の4)

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この記事で参照した一次情報

本記事は2026年10月時点で上記の一次情報を確認して書いています。免税点の金額、特定期間の判定方法、インボイス登録の経過措置の期間は法改正で変わることがあります。法令は改正されることがあるため、最新の情報および個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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